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岡山刑務所の壁画消滅危機 複製展示、更生への思い伝える

41年前に岡山刑務所に描いた壁画を眺める(左から)川崎さん、片山さんと望月所長
41年前に岡山刑務所に描いた壁画を眺める(左から)川崎さん、片山さんと望月所長
1979年の完成時の壁画
1979年の完成時の壁画
 岡山刑務所(岡山市北区牟佐)の敷地を囲むコンクリートの内塀に長さ約190メートルにわたって描かれた18枚の壁画がある。41年前、市民約120人が受刑者の心の安らぎや更生を願って制作した作品だ。長い年月とともに傷んで消えかかっている壁画もあるが、現状では修復が難しいといい、同刑務所は絵の複製を体育館の壁に掲示するなどして制作者の思いを伝えていく。

 壁画制作は1979年、同刑務所が企画し、それを山陽新聞が報じた。芸術家や大学の美術教員、学生、主婦らが協力を申し出て、8月から約3カ月かけて完成させた。

 作品は屋外運動場に面して連続して並び、高さはいずれも3メートル、幅は5メートルから20メートルまである。厳しい冬を耐えて咲いたミズバショウや躍動感あふれる陸上競技選手、古里をイメージした街並みなどで、完成時に作られた壁画集には「耐える力を養ってほしい」「あきらめないで」などと制作者の思いもつづられた。

 当時、岡山大教育学部4年だった木工作家川崎正博さん(62)=同=と片山真由美さん(63)=同=は同級生や教員ら計19人で「海」と題し、竜宮城とその手前に砂の道、周りに魚や貝が生息する海底の世界を描いた。「竜宮城を社会の入り口と考え、そこまで一歩一歩進んでほしいと考えた」と振り返る。

 壁画に励まされた受刑者も多い。服役した翌年に壁画制作を見た男性受刑者(64)は「何もない壁が多くの人の手で変わっていくのを見て勇気づけられた。あれから壁画を見ては当時を思い出し、力にしてきた」。別の男性受刑者(67)も「社会の人々が自分たちのために一生懸命取り組んでくれ、うれしかった。自らの罪と向き合わねばと強く思った」と語る。

 壁画の多くは今、色が剥げるなど傷みが目立つ。ただ、修復作業のために足場を組むのは、2012年に広島刑務所(広島市)で、受刑者が工事用の足場から塀を乗り越えて脱走する事件があったことなどから困難に。塀の外側から油圧ショベルなどを使って作業員を中に入れる方法もあるが、多額の費用がかかる。加えて岡山刑務所は築50年を超え、いつ建て替えになるか分からないともいう。

 「内塀の壁画は全国の刑務所でも例がない。可能なら修繕したいが、現状では難しい」と望月英也所長(59)は言う。

 同刑務所では本年度、壁画集の絵を複写して体育館の壁に掲げ、受刑者が見続けられるようにする計画。「市民にも壁画の存在を広く知ってもらいたい」と、見学者用にパネル展示もすることにしている。

(2020年11月19日 09時27分 更新)

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