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児童虐待防止法 20年の歩み次へつなげよ

 児童虐待防止法の施行から来月で20年となる。親や親に代わる養育者が子どもに暴力を振るったり、食事をさせなかったりするのは「家庭内の問題」ではなく「許されない虐待」であると定義し、社会の意識を大きく変えるきっかけとなった。

 全国の児童相談所が対応した虐待の相談・通告件数は、統計を始めた1990年度(1101件)から増加の一途をたどる。施行前年の99年度には初めて1万件を超え、2018年度は約16万件だった。関心の高まりが数を押し上げているとはいえ、それも全体の一部であることを踏まえると、子どもの権利を守るという目的は道半ばだ。

 内容では子どもの前で家族へ暴力を振るう「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」など心理的虐待が増えており18年度は約半数を占めた。一方で幼い命が奪われる事件も後を絶たない。全国の警察が昨年摘発した18歳未満の子ども虐待事件の被害者は1991人と過去最多で、このうち54人が亡くなった。

 こうした情勢を背景に防止法は3度、改正を重ねている。04年には虐待を「著しい人権侵害」と明記し、虐待疑いの段階でも通告を義務付けた。08年には子どもの安全確認のための強制立ち入りなど児相の権限を強化。今年は、しつけの名目であっても親が子どもに体罰を加えることを禁じた。子どものSOSを受け止めるためには、今後も不断の見直しが欠かせない。

 課題も残る。児童虐待は母親へのDVとひとつながりになったケースが少なくないが、児相と配偶者暴力相談支援センターなどの情報共有が不十分との指摘がある。加害者の行動を監視・抑制する取り組みや、更生への教育も進んでいるとは言いがたい。

 さらに近年、分かってきたのが虐待を受けて大人になった「サバイバー」への支援不足である。親が教えるはずのあいさつや常識を身につけられず仕事が続かない人や、家庭や子どもを持つ際に深く悩む人が多いという。長期にわたって粘り強く支える仕組みづくりは急務だろう。

 防止法は児童の健全な育成のために「近隣社会の連帯」も求めている。児相の中には、さまざまな権限が付与され業務が多岐にわたるようになった結果、パンク寸前といった所も少なくない。公的機関にとどまらず、地域の子育て支援団体などを含めた連携のあり方を探りたい。

 サバイバーや弁護士らでつくる民間有識者会議は先月、虐待や自殺、貧困などを防ぐには個別の法改正では間に合わないとして、国や地方自治体での縦割りをなくし、児童の権利を保障する「子ども基本法」の試案を発表した。社会全体に子どもを守る意識を定着させなければ、問題解決はおぼつかないとの危機感は理解できる。虐待のリスクの芽を摘む方策について、一層議論を重ねることが大切だ。

(2020年10月20日 08時00分 更新)

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