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子どものころ、繰り返し読んだ「…

 子どものころ、繰り返し読んだ「だめの子日記」を久々に手に取った。著者は光吉智加枝さん。45年前、自転車で登校中に交通事故で亡くなった。岡山県立津山高の1年生だった▼生きた証しを残したいと、両親は直後に日記を遺稿集にまとめた。評判を呼んで全国で出版され、教科書でも紹介された。思春期の日々を素直な言葉でつづった日記は、あらためて読み返してもみずみずしい▼再読のきっかけをくれたのは津山東高の演劇部の取り組みだ。昨年、顧問の宮島宏幸教諭が自身も子どものころに読んだ日記を題材に、創作劇を作ろうと提案。生徒たちも日記に感銘を受けたという▼いじめに悩む高校生が日記に出合い、励まされる。「未来を信じて、生きて」。劇に込められたそんなメッセージは令和の高校生にも響くのだろう。今年は続編が作られた。脚本を知った神奈川県の高校も今年上演するなど、うれしい反響が広がっている▼鏡野町の智加枝さんの生家を訪ねた。「皆さんに知ってもらい、娘は亡くなったけれど生きているようです」。ご両親は悲しみを包み込むような、穏やかな笑顔だった▼智加枝さんは身近な自然の美しさを頻繁に記していた。〈秋の夕日は金色で、自転車で帰る私の長い影を豊かな実りの中におとしてくれる〉。彼女が好きだった故郷の景色は今も美しい。

(2020年10月20日 08時00分 更新)

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