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菅首相就任1カ月 自らの言葉で説明尽くせ

 菅義偉首相が就任してから1カ月が過ぎた。次々と課題を設定し、スピード感を持って解決を目指す手法は政権内に緊張感をもたらしている。一方、説明不足も目立ち始めた。目標設定のあり方や決定過程を、自らの言葉で国民に丁寧に説明すべきだ。

 就任以来、菅首相は新型コロナウイルス対策の中で浮き彫りになった行政や民間のデジタル化の遅れに対応するため、デジタル庁の創設に向けた法整備を指示。はんこ使用廃止の検討も進める。縦割り行政の打破を目指す行政改革を断行するための窓口も設置し、次々と設定した課題の解決へ対策を急ぐ。

 あわせて、携帯電話料金の引き下げ、不妊治療への保険適用、男性が育児休業を取得しやすくする制度の導入などを矢継ぎ早に担当閣僚らに指示し、「国民のために働く内閣」の仕事ぶりをアピールしている。高い支持率の要因といえよう。

 ただ、どのような優先順位で課題を打ち出しているのか、解決策を進めるうえでデメリットは存在しないのか。多くは説明されないまま進んでいる。トップダウンですべてを決める手法に不安は捨て切れない。

 懸念が現実になったのが、日本学術会議の会員任命拒否問題である。同会議から推薦された105人のうち6人の推薦を認めなかった。関係者や野党から「学問の自由を脅かす」「違法だ」との指摘もあがっている。

 菅首相は「任命する責任は首相にある。推薦された方をそのまま任命する前例を踏襲していいのか」と述べ、学問の自由への侵害や違法だとの指摘は「あたらない」と否定した。しかし、拒否理由については「個別の人事に関することはコメントを差し控えたい」と回答を避けた。これでは拒否された学者だけでなく、多くの国民から不信感を持たれても仕方あるまい。

 打ち消すためには説明を尽くすべきだが、就任会見以降は通常の記者会見も実施していない。先の回答は質問者を限定したグループインタビューに応じた時のものだ。現状を顧みれば、質問が飛び交う通常の記者会見すら開かない対応は、説明逃れと受け止められよう。

 菅首相は、コロナ禍を克服した後に目指すべき社会のあり方や外交政策など、日本の未来を見据えた大局的な考え方を示していない。このところ連日、学者や経済人、各方面の専門家らと次々と会談し、一部は助言役として内閣参与に任命している。自らの考えを定めるための情報収集と思えるが、付け焼き刃の対応にも見える。

 26日から始まる臨時国会は、初の論戦の舞台となる。学術会議問題では任命拒否の理由を明確に説明しなければならない。あわせて次々と打ち出した政策が、日本の未来にどうつながるのか、分かりやすく語ってもらいたい。

(2020年10月17日 08時00分 更新)

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