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一抱えほどのその球体はつぼみを…

 一抱えほどのその球体はつぼみを表している。斜め上を向いたくぼみがあり、雨が降ると水がたまる。それは悲しみの涙だ。あふれ出た涙の粒は種のように地に落ちて、交通事故ゼロの未来への希望の芽となる▼東京都豊島区東池袋の交差点に暴走した乗用車が進入、母子2人が死亡、10人が重軽傷を負った事故が起きたのは昨年4月のことだった。区は今夏、現場に近い公園に犠牲者を悼む慰霊碑を設置した▼惨事から1年半。事故原因を究明する公判が来月8日、東京地裁で始まる。検察側は運転していた当時87歳の被告がブレーキとアクセルを踏み間違えたとみて刑事責任を問う構えだ▼高齢ドライバーに厳しい視線が注がれることになった事故だった。先の国会では改正道交法が成立。一定の違反歴のある75歳以上に実車試験を義務付け、自動ブレーキなど安全装備のある車限定の免許創設も決まった▼もっとも、公共交通機関が少ない地方を中心に車は生活の足として欠かせない。自動運転技術の実用化を急ぎ、相乗りタクシーや自家用車による有償旅客運送などサービスの網も広げたい▼池袋の事故で妻子を失った男性は、被害者参加制度で公判に臨むという。「真実を明らかにすることで、事故再発防止への種にしたい」と。種をどう芽吹かせるか。誰もが自分のこととして考えたい。

(2020年09月28日 08時00分 更新)

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