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電子決済の不正 身に覚えない出金確認を

 電子決済サービスを通じて銀行の預貯金が不正に引き出される被害が広がっている。注意したいのは、電子決済を利用していない人も被害に遭っている恐れがあるということだ。まずは通帳を記帳するなどし、身に覚えのない出金がないかを確認したい。

 悪用されたのは、スマートフォン決済などのサービスに、ひも付けられた銀行口座からチャージ(入金)する方法だ。何者かが不正に入手した個人情報を使い、他人に成り済まして決済サービスを利用し、口座から預貯金を引き出したとみられる。

 今月、NTTドコモの電子決済サービス「ドコモ口座」を利用した不正な引き出しが中国銀行(岡山市)など10以上の銀行で確認された。ゆうちょ銀行ではドコモ口座のほか、ソフトバンク系の「ペイペイ」、メルカリ系の「メルペイ」などを通じた不正引き出しもあった。ドコモ口座だけでも被害総額は18日時点で2700万円を超えた。

 まだ被害に気づいていない人もいるとみられ、今後、被害額は拡大しそうだ。決済サービス事業者や銀行は被害額を補償するとしており、慌てる必要はないものの、まずは銀行口座の明細で「ドコモコウザ」や「ペイペイ」といった心当たりのない出金記録がないかを確かめたい。

 この問題に便乗し、「あなたの口座も被害に遭った」などとして高齢者世帯に不審な電話があり、現金をだまし取られる事例が報告されている。特に高齢者には親族や周囲の人が声を掛け、被害に遭わないよう注意を促したい。

 電子決済を巡っては、昨年、セブン&アイ・ホールディングスの「7pay(セブンペイ)」が不正利用でサービス停止に追い込まれた。ドコモ口座では、りそな銀行で昨年5月に今回と同様の不正な引き出しがあったが、その後もドコモ側は抜本的な対策を講じていなかったという。

 教訓が生かされず、不正引き出しが頻発しているのは深刻な事態である。警察当局は事業者、銀行と連携し、まずは不正の手口の全容解明を急いでほしい。

 ドコモ口座は当初、携帯電話の契約者向けの送金サービスだったが、事業拡大のため、契約者以外でもメールアドレスがあれば開設できるように要件を緩和していた。事業拡大を急ぐあまり、安全対策が後回しにされたといわざるを得ないだろう。

 電子決済サービスと銀行口座のひも付けの際の本人確認も不十分で、銀行側の不備も指摘されている。被害に遭った銀行は成り済ましを防ぐ「2段階認証」の仕組みを設定していなかった。決済サービス事業者との連携の隙を犯罪者に狙われた形だ。

 電子決済サービスは政府が旗を振って推進しているが、預金者の不安を取り除かなければ普及は進むまい。官民を挙げて、安全対策を盤石にしなければならない。

(2020年09月20日 08時00分 更新)

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