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秋の深まりは日中より日が暮れた…

 秋の深まりは日中より日が暮れた後に知ることが多い。夜風が澄み、虫の音もさえてきたこの頃は気付けば月を仰いでいる。ことしの「中秋の名月」は10月1日。これから円く太ってこよう▼その夜を日々、泣きながら待った人がいる。日本最古の物語とされる「竹取物語」のかぐや姫だ。月から地球へ遣わされたが、年月がたち迎えが来るという▼清浄な月世界から俗世間への、いわば流刑だったと原作にある。ではなぜ、帰郷を許されて悲しむのか。なぜ追放されたのか。問い続けて一本の映画にしたのが、岡山市出身のアニメ監督・高畑勲さんである▼県立美術館で開催中の回顧展(27日まで)では、答えに当たる「かぐや姫の物語」の構想メモなどが見られる。姫は不老不死でけがれのない天上ではなく、人の弱さや醜さを含め、地球で生き生きと「めぐる命」に憧れたのだ―と▼長い製作期間には、赤磐市出身の詩人・永瀬清子さんの「諸国の天女」を絶えず思い浮かべたそうだ。世の女性たちを地上に降りた天女と見立て、それぞれが、もうけた家族のために地に根を張ったとうたう▼永瀬さんは田畑を耕す傍ら言葉を紡ぎ、息子世代の高畑さんは、その感性を「あふれ出す泉」と敬っていた。山河に草花、風や月夜…。2人が残した美しい情景は、ここに広がる古里とつながっている。

(2020年09月19日 08時00分 更新)

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