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まず時間の感覚がなくなり、次に…

 まず時間の感覚がなくなり、次に場所の感覚、人物の認識能力の順に失われる。それでも感情や自意識は健在だから、状況がのみ込めず失敗をしてしまう自分をもどかしく思い、自信をなくしてしまう▼認知症の専門医で、自らも患っていることを公表している長谷川和夫さんが進行の一例として、近著「認知症でも心は豊かに生きている」で挙げている。当事者の胸のうちを知り、寄り添う手掛かりになろう▼今月は国際アルツハイマー病協会が定める「世界アルツハイマー月間」である。岡山県内でも、支援のイメージカラーであるオレンジのライトアップが「アルツハイマーデー」の21日まで津山城、あすは岡山城でも行われるなど、各地で理解が呼び掛けられる▼専門医の長谷川さんも自分がなるまで気付かなかったことがある。認知症は一度なったら戻れないと思われがちだが、実際は普通の時と行ったり来たりすることがあるという▼進行したからといって、まったく別人になってしまうわけでもない。以前とは違う人と思わず、変わらぬ目線で接してほしいと願っている▼詩人の田村隆一さんの作品「生きる歓(よろこ)び」が思い浮かんだ。「人生痛苦多しといえども/夕べには茜(あかね)雲あり/暁の星に光りあり」。オレンジに劣らない温かさを感じる茜色を、当事者と寄り添って、ともに見たい。

(2020年09月16日 08時00分 更新)

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