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防災・復興に関する自治体への提案 充実し始めた取り組みの継続を

新見公立大学公開講座で講演する筆者
新見公立大学公開講座で講演する筆者
 2019(令和元)年9月新見市集中豪雨から1年が経過したタイミングで、新見公立大学の公開講座の講師を「防災・災害における専門家の役割を考える-新見市唯一の弁護士として」というテーマで務めてきました。その中で自治体に対する防災・災害復興対策として4つの点を提案しましたので紹介いたします。

■自主防災組織


 1つ目は、地域毎に防災を担う自主防災組織の組織化の推進と活動の活発化を自治体が支援することを提案します。災害においては地域や近隣住民同士の助け合い(いわゆる「共助」)により救われる命が多いことは良いことです。しかし災害後の自発的なものだけに頼るのではなく、確実に効率的に共助を実現するために自主防災組織の組織化の推進と活動の活発化が必要です。

 2018年(平成30年)7月の西日本豪雨災害前は、全国平均以下だった岡山県内の自治体での自主防災組織の組織率が、豪雨災害後は全国平均を上回り、津山市、勝央町や奈義町など計11自治体では組織率100パーセントを達成しています。岡山県内で組織化が進んでいることはとても素晴らしいことです(「自主防災組織 県内で結成相次ぐ 活動の実効性向上が課題に」https://www.sanyonews.jp/article/1047047)。

 ただ、自主防災組織ができても最初の数年は活動が活発だったけれど、時間が経過すると活動が下火になるという地域が少なくないようです。自治体が活動の継続を支援し、後で述べる個別避難計画の作成のように、平時から自治体と自主防災組織が連携して活動する仕組みが必要と考えます。

■個別避難計画


 次に、避難行動要支援者名簿の情報共有と個別避難計画の作成の推進を自治体に提案します。避難に支援が必要な方を災害前に把握しておく避難行動要支援者名簿を作成している自治体がほとんどですが、名簿の更新が数年行われていないことも珍しくないと聞いています。少なくとも1年に1回は名簿情報の更新をすべきです。

 また、名簿を自治体内だけではなく地域とも情報共有すべきです。個人情報保護を重視し過ぎて、地域の自主防災組織などと情報共有できていない自治体も多くあります。

 1人での避難が難しい高齢者や障がい者の名簿を作成しただけで、実際に避難を支援することが期待される地域との情報共有ができていないのでは、名簿を作った意味が半減します。地域との避難行動要支援者名簿の情報共有を進めてほしいです。

 そして、情報共有から一歩進めて、避難行動要支援者1人1人に応じた避難計画を地域の自主防災組織や福祉施設などと行政が連携して作成すべきです。このような個別避難計画まで作成が終わっている自治体の方が少ないというのが現状ですので、自治体には早急に個別避難計画を作成してほしいです(「災害時の高齢者避難、福祉と連携 内閣府、「個別計画」の作成促す」https://www.sanyonews.jp/article/1042719)。

■災害時借り上げ協定


 3つ目は、安全な避難場所確保のために旅館・ホテルと災害時借り上げ協定を締結することを市町村に提案します。体育館のような個室になっていない大規模避難所ではなく、旅館やホテルなどの宿泊施設を借り上げて避難所にすることは、新型コロナウイルスのまん延予防にもなります。先日の台風10号の際には、ホテルに自主避難されている方が多くいるという報道がなされており、従来の大規模避難所に新型コロナウイルスの感染のリスクを感じられた方も多かったようです。

 間仕切り付きの段ボールベッドの普及など避難所の環境は改善していますが、新型コロナウイルスだけではなく、季節性インフルエンザなどの感染は高齢者や基礎疾患をお持ちの方にとってはリスクが高まります。新型コロナウイルスのまん延が収束しても、個室の避難所の確保が必要と考えます。

 岡山県と岡山県旅館ホテル生活衛生同業組合が「災害時における宿泊施設等の提供に関する協定書」を2008年に締結していますが、大災害限定ですし、各市町村が使いやすいように顔の見える関係である各市町村と個々の旅館・ホテルが災害時の宿泊施設の提供に関して協定を結ぶことが避難者の安全な避難場所の確保に資すると考えます。

■災害廃棄物処理計画


 最後に、市町村において災害廃棄物処理計画の策定をすることを提案します。都道府県は廃棄物の処理及び清掃に関する法律で災害廃棄物処理計画の策定が義務付けられており策定されていますが、市町村については、法律で義務化はされていません。

 しかし、災害廃棄物を処理することは復興への最初の第一歩ですので、市町村は災害廃棄物処理計画を策定しておくべきです。一言に災害廃棄物の処理といっても、災害救助法に基づく処理や環境省の災害廃棄物処理事業による処理などさまざまな法令を根拠に行われており、実際に作業をする自衛隊や民間業者の協力を得るなど連携も必要になりますので、災害前から念密な計画を立てておく必要があります。

 岡山県内では、西日本豪雨前は、4つの市町しか災害廃棄物処理計画を作成していませんでしたが、この豪雨の経験から災害廃棄物処理計画の必要性が理解され、現在では14の市町が作成し、増加しています。このまま未作成の13の市町村も早期に作成してほしいです。

 以上のとおり、自主防災組織や災害廃棄物処理計画のように西日本豪雨の前は取り組まれていなかった防災や復興に関する取り組みが、豪雨後は活発になっていることからも、岡山県内で防災や復興に関する取り組みに対する熱意が上がっていることが分かります。私も、岡山県が災害に強く災害からも復興できる地域になることに少しでもお役に立てればと思っています。

 ◇

 大山知康(おおやま・ともやす)2006年から弁護士活動を始め、岡山弁護士会副会長など歴任し、17年4月から同会環境保全・災害対策委員長、18年4月から中国地方弁護士会連合会災害復興に関する委員会委員長。新見市で唯一の弁護士としても活動。市民の寄付を基にNPOなどの活動を支援する公益財団法人「みんなでつくる財団おかやま」の代表理事を20年6月まで4年間務めた。19年1月からは防災士にも登録。趣味はサッカーで、岡山湯郷ベルやファジアーノ岡山のサポーター。青山学院大国際政治経済学部卒。玉野市出身。1977年生まれ。

(2020年09月15日 15時00分 更新)

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