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遊びが過ぎて勘当になった若旦那…

 遊びが過ぎて勘当になった若旦那。頼りにした女性や友達の所からも追い出されて、橋から身を投げようとする。江戸落語「唐茄子(なす)屋政談」である▼通り掛かった人が後ろから羽交い締めにしたものの、よく見ると道楽者のおいだった。「おまえなら止めるんじゃなかった」と、突き放したのは本心でなかろう。実際、連れ帰って世話を焼く▼事情は全く違うだろう。だが、よく声を掛けたものだ。自転車男子BMXレースの東京五輪代表で笠岡市出身の長迫吉拓さん(26)が若者の自殺を防いだとして先日、笠岡署から感謝状を受けた。同市内の橋の上に夜、1人でいるのを不審に思ったという▼贈呈式で「生きていれば楽しいこともある」と語ったのは、自らの苦労もあってか。BMXは日本でなじみが薄く、スポンサーを探して400社以上に電話をかけたこともあったそうだ。そのかいあってスイスを拠点に世界を転戦するが、コロナ禍のため今は古里などでの調整を余儀なくされている▼落語の若旦那はおじに命じられカボチャの行商を始め、出会った人に助けられて売りさばく。その売り上げで自身も困っていた母子を助け勘当を解かれる▼思い浮かぶのは「恩送り」の考え方だ。恩を別の人に返すことで、多くの人が救われる。長迫さんに助けられた若者も、恩を送れる日が来るといい。

(2020年08月09日 08時00分 更新)

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