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養育費不払い 貧困招かぬ国の対策急げ

 離婚後の養育費不払い問題を解消するため、政府が法改正などに向けた検討を始めた。既に一部自治体が独自の支援策を始めているが、全国的な制度を整えるのは国の責務といえよう。

 政府が先月決定した女性活躍に関する「重点方針2020」で、柱の一つに「困難を抱える女性への支援」が盛り込まれ、養育費の確保が明記された。具体的な対策は法務省が設置した有識者による検討会議で年内に提言をまとめるという。検討会議は大学院教授や弁護士、母子世帯支援団体の代表ら7人で構成し、6月から議論を始めている。

 厚生労働省が先月公表した「子どもの貧困率」(2018年時点)は13・5%だった。中間的な所得の半分に満たない家庭で暮らす18歳未満の割合を示し、子どもの7人に1人が貧困状態だ。中でも、ひとり親世帯の貧困率は48・1%と極めて高い。

 とりわけ厳しいのは母子世帯で、非正規雇用に就く割合が高く、年収200万円を下回る世帯も多い。母子世帯を対象にした調査では9割近くが「生活が苦しい」と訴えている。母子世帯で離婚相手から養育費を受け取っているのは4分の1にとどまり、不払いが子どもの貧困を招く要因の一つになっている。

 この問題に先駆的に取り組んできた兵庫県明石市は、新型コロナウイルスの影響で生活が困窮するひとり親世帯を緊急支援するため、不払いの養育費を1カ月分に限って市が立て替え払いをする事業を先月から始めた。自治体が直接立て替え払いをし、離婚相手から取り立てるのは全国初とみられる。来春には条例化し、恒久的な制度を目指すとしている。

 ほかにも、ひとり親世帯が離婚相手からの債権回収を民間の保証会社に頼めるよう、必要な保証料を自治体が負担する取り組みも国内で広がりつつある。欧米では行政機関が養育費を立て替えたり、不払いそのものに罰則を設けたりする例もある。国内外の事例を検証し、実効性の高い仕組みを整える必要がある。

 強制力の高い徴収制度を導入するとしても、前提となるのは離婚時の養育費の取り決めだ。現状では取り決めをしているのは母子世帯の4割にとどまる。ドメスティックバイオレンス(DV)が絡み、話し合いができないケースも少なくないようだ。離婚前に法律の専門家や支援団体などとつながり、助言が受けられるような支援体制の強化が急がれよう。

 自民党女性活躍推進本部は、離婚前に金額の取り決めを原則として義務付け、DVなどで協議ができない場合は子どもの年齢や人数で養育費の額が決まる制度の導入などを提言している。こうした対策も検討に値するだろう。

 離婚という親の事情で、子どもが経済的な不利益を受けることがないよう、踏み込んだ対策を講じたい。

(2020年08月05日 08時00分 更新)

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