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香港議会選延期 透ける民主派抑圧の狙い

 香港の民主主義を守る闘いにとって、さらなる逆風となりそうだ。香港政府の林鄭月娥行政長官が、9月に予定されていた立法会(議会)選挙を1年延期することを明らかにした。

 理由として新型コロナウイルスの感染拡大を挙げているが、額面通りには受け取りにくい。中国政府による香港の統制強化を目的とした国家安全維持法(国安法)施行に市民の反発が広がり、選挙に向けた民主派の勢いが増しているさなかである。背景に恣(し)意(い)的な判断があるとすれば、公正な選挙という民主主義の土台を揺るがしかねない。

 今回の措置は、緊急時に立法会の手続きを経ずに行政長官が必要な規則を設けられる条例を根拠としている。現議員の任期延長などの措置も必要となるため、8日から開かれる中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会会議で決定するという。

 新型コロナウイルス感染症が香港でも再び拡大していることは事実である。だが、延期決定の背景には政治的な思惑が見え隠れする。

 香港の民主化勢力は、立法会選挙で候補者同士の乱立による共倒れを防ぐため、立候補者を絞り込む予備選を先月実施した。その投票者は主催者が目標とした17万人を大きく上回る約61万人に達した。

 香港政府や中国に対する反発をばねに民主派が勢いを増し、選挙で躍進する構図が現実味を増していた。それを警戒した当局側が危機感を強め、選挙の先送りに踏み切ったとみる向きは少なくない。

 決定前日には、香港政府が民主派メンバー12人の立候補資格を認めないことを明らかにしたばかりだった。2014年の大規模民主化デモ「雨傘運動」のリーダーらが含まれる。前回16年の立法会選挙でも「独立派」と認定した6人の立候補資格を認めなかったが、今回はより強硬な姿勢を打ち出していた。

 選挙の延期に伴ってこの手続き自体は白紙に戻るが、1年後の選挙で同様に反政府的姿勢を示すのなら、立候補は認めないと警告を与えるのが目的だったともみられる。

 米国は「香港の繁栄を支えてきた民主的な手続きと自由を損なう」と厳しく非難している。中国と対立を深める米国ならずとも、あまりに強引な手法に内外から批判が出るのは必至だろう。

 中国が香港に高度の自治を認めるとした「一国二制度」は、国安法の施行によって形骸化の道をたどっている。香港で独立派メンバーや政府への抗議活動に参加した人が逮捕されているだけでなく、国外にいる香港出身の民主活動家らも指名手配されている。容疑者の国籍や、犯罪を行った場所も問わずに適用される国安法に対する懸念は増すばかりである。

 香港の自由と民主主義をこれ以上後退させぬために、国際社会が厳しく自制を促していくことが大切だ。

(2020年08月04日 08時00分 更新)

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