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豪雨被害 早めの避難で命を守ろう

 繰り返される悲惨な状況に心が痛む。自然災害のすさまじさを改めて突き付けられた思いがする。

 熊本県南部を襲った記録的な豪雨は、河川の氾濫や土砂災害などで多くの犠牲者・行方不明者を出した。その後も九州北部をはじめ各地に被害が広がる状況を呈している。引き続き警戒を強めなければならない。

 こうした事態に、政府は九州の豪雨被害に対処する自衛隊の派遣規模を1万人態勢から2万人態勢に拡大。支援物資の発送では当面、被災自治体の要請を待たずに必要な物資を届ける「プッシュ型支援」を軸に進めるという。国は自治体と連携し、行方不明者の捜索や被災者の支援に全力を挙げてほしい。

 豪雨をもたらしたのは、積乱雲が帯状に連なる「線状降水帯」とされる。局地的に大雨が続くため被害が大きくなる。加えて発生予測が技術的に難しい。2017年の九州北部豪雨や、18年の西日本豪雨も同様だ。もはや常態化しているとの認識で、国土づくりも含めた防災体制を検討しなければならない。

 豪雨は、災害弱者問題も浮かび上がらせた。熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」では、職員や地元の協力者が入所者を2階に避難させた。だが、エレベーターが無い上に、車いすや寝たきりの人が多いため間に合わず、14人が犠牲になった。

 同園では避難計画を策定して地元協力者も交えた訓練も行っていたと言う。球磨村も防災意識は高かったようだ。それでも痛ましい状況になった。検証で問題点を洗い出し、改善を図ってほしい。

 今回の特徴の一つは、新型コロナウイルスの感染が懸念される段階での避難という点にある。不特定多数の被災者が身を寄せる避難所は密閉、密集、密接の「3密」が起きやすい。感染を防ぐため検温や消毒、換気などはもちろん、人と人の間隔を広げる。さらには発熱者の専用スペースの確保も必要になろう。

 このため、1カ所当たりの収容人数が大幅に制限される。地域に必要な数の避難所を確保できているか。その内容はどうかなどが気になる。

 災害に見舞われたら、何よりも早めに避難するなど自らの命を守る行動を起こすことが肝要だ。親戚や知人の家への避難や、外に出るのが危険なら自宅での“垂直避難”など柔軟な判断も必要だろう。

 被災地では、家屋の後片付けなど重労働が待ち受ける。高齢者だけの世帯もあり、多くの手助けが必要となる。頼みの綱はボランティアだが、コロナ感染の懸念から熊本では当面、県内募集に限定する方針とされる。感染防止と支援活動をどう両立できるかが喫緊の課題と言えよう。

 専門家は、今回と同様の豪雨災害は「どこで起きても不思議ではない」と指摘する。改めて防災と自己を守る意識を高めたい。

(2020年07月09日 08時00分 更新)

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