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倉敷市連島町出身の詩人薄田(す…

 倉敷市連島町出身の詩人薄田(すすきだ)泣(きゅう)菫(きん)に「雨の日に香を燻(た)く」という随筆がある。「梅雨の雨のしとしとと降る日には、私は好きな本を読むのすら勿体(もったい)ない程の心の落ち着きを感じます」と言い、その雨の中で香をたいていると、「潤いと柔らかみ」に包まれて自身と自然が感応する、と名文は続く▼静かに降り続く雨は、外界の騒がしさを吸い取るように遮断し、草花を生き生きとさせる。うっとうしく感じていた梅雨への思いが少し変わってくるようだ▼ただ、これもしとしと降るからの味わいである。梅雨明け近くに降る豪雨は、昔から警戒されてきた。夏至から11日目は、七十二候の「半夏生」で今年は今月1日にあたる。このころに降る雨を「半夏雨」、その雨がもたらす洪水を「半夏水」と呼び、恐れてきた▼ここ数日、「半夏水」が各地に大きな被害をもたらしている。ごう音とともにたたきつける雨は、濁流となって河川の堤防を越え、切り裂いて氾濫した。熊本県の球磨川流域では高齢者を中心に多くの犠牲者も出た▼気象庁は毎年のように「これまでに降ったことがない雨」への注意を呼びかける。危機感を強く持つ必要があるが、先人の戒めを大切にしなければとも思う▼しとしと降る雨とも、たたきつける雨とも付き合わなければならない。その付き合い方こそ大事なのだと。

(2020年07月09日 08時00分 更新)

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