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被災 農地半減も加温栽培で補う 総社のブドウ農家 立て直しに奮闘

シャインマスカットの加温促成栽培に取り組む仮谷さん
シャインマスカットの加温促成栽培に取り組む仮谷さん
 西日本豪雨で大きな被害を受けた総社市福谷のブドウ農家が経営の立て直しに奮闘している。被災で農地が半減したものの、栽培方法を工夫して販売単価を上げることで補った。助けになったのは、地元で先輩農家から連綿と受け継がれてきた栽培技術だった。

 6月下旬、JA晴れの国岡山吉備路温室ぶどう部会副部会長を務める仮谷昌典さん(54)のハウスは早くも出荷最盛期を迎えていた。10アールに16本植わったシャインマスカットの木が縦横に枝を伸ばし、エメラルドグリーンの房をたわわに実らせていた。

 2018年7月の豪雨では高梁川の堤防が決壊し、川沿いにあった桃園地5アールとブドウのハウス12アールが流された。その後、農地があった場所には堤防や道路が建設されることになり栽培面積は半減したが、「生活のためには収入を減らせない」と歯を食いしばってきた。

 仮谷さんが被災後、新たに取り組んでいるのはシャインの加温促成栽培だ。真冬の1月にハウスの中を暖房し、露地より2カ月ほど早く実を付けさせる。市場に出回る数が少なく貴重なため、高いときには5キロ3万5千円前後と、出荷量が多い9月の3倍以上の値を付ける。その分、実を大きくしたり糖度を高めたりするのに高い技術が必要になる。

 福谷地区は伝統的に県特産の高級ブドウ、マスカット・オブ・アレキサンドリアの加温栽培が盛んに行われてきた。「川と山に挟まれた狭い農地でいかに収益を上げるか」が大命題で、約20年前に栽培を始めた仮谷さんも先輩農家から水やりのタイミングや肥料のやり方などの指導を受けたという。

 当時10軒ほどあった農家は今、半分以下になり高齢化も進む。残った農家もほぼ全員が豪雨で農地や設備を失っており、産地の維持が危ぶまれた時期もあった。あれから2年。「『もうやめよう』と思ったこともあるが、産地の火を消したくない一心で頑張ってきた。今年の収益は被災前の水準を超えたい」と話す仮谷さんの笑顔に自信の色がのぞいた。

(2020年07月05日 10時16分 更新)

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