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ふるさと納税 制度の抜本是正の契機に

 意に沿わない自治体を、強権的ルールで退けた国の手法への警鐘と言えよう。

 ふるさと納税の新制度から大阪府泉佐野市を除外した総務省の決定を巡る訴訟で、最高裁は市側の訴えを認めて違法と判断し、処分を取り消した。これにより、高裁段階で敗訴した泉佐野市の逆転勝訴が確定した。

 2008年に創設されたふるさと納税には、都市部に集まりがちな財源を、応援したい自治体への寄付によって地方に移す狙いがある。だが、寄付を多く得たい自治体による返礼品競争が過熱するなどひずみが生じた。このため地方税法を改正して昨年6月から、返礼品の基準を「寄付額の30%以下の地場産品」とする新制度が始まった。

 総務省は直前に、「新制度移行の約半年前から適正な寄付募集をしていなかった自治体は除外する」とのルールを示した。移行前からインターネット通販のギフト券などを贈って多額の寄付を得てきた泉佐野市と他の3町が参加対象から除外された。

 訴訟の大きな争点は、法改正前の寄付金の集め方を理由にした除外決定の妥当性だった。判決は、改正地方税法に照らして「新制度移行前の募集実態を参加可否の判断材料にする趣旨はない」と指摘。参加要件のルールは「違法で無効だ」と断じた。

 新しい法律を過去にさかのぼって適用できるなら、後付けの理由で恣意(しい)的に処罰されかねない。「法の不遡及(そきゅう)」の原則に沿った妥当な判断と言えよう。国と自治体は対等・協力の関係なのに、従わなければ容赦しないとの総務省の姿勢は、地方分権の“旗振り役”とは程遠い。

 判決を受け、高市早苗総務相はきのう、泉佐野市など3市町の制度復帰を認めると発表した。一部除外理由が異なる残る1町も、制度参加の申請内容を修正すれば復帰を認める方針とされる。

 勝訴したとはいえ、泉佐野市のなりふり構わぬ寄付集めは利己的に過ぎる。判決も「社会通念上、節度を欠いていたと評価されてもやむを得ない」とくぎを刺した。他の自治体の不公平感はさぞ強かろう。猛省を促したい。

 混乱を生じさせた原因は、制度設計の甘さにある。15年には減税対象となる寄付の上限を2倍にする一方で、返礼品競争への対応は後手に回った。高所得者ほど得をする仕組みなど問題点は多い。高知県奈半利(なはり)町では返礼品を巡って不祥事が浮上した。

 その一方で、新型コロナウイルス対策支援に返礼品なしでふるさと納税をするケースが増えている。これまでも大災害などで見られたが、自治体の使い道に純粋に共感して寄付する人たちの流れを大きくしたい。

 ふるさと納税の原点に立ち戻って、国と自治体が対等の立場で議論し、公平で透明性の高い制度への抜本的見直しが急がれる。

(2020年07月04日 08時00分 更新)

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