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従業員コロナ感染 公表相次ぐ 岡山県内企業、リスク低減評価

従業員の新型コロナウイルス感染により店の臨時休業を知らせる看板(左)と、社員の感染を公表した企業のホームページのコラージュ
従業員の新型コロナウイルス感染により店の臨時休業を知らせる看板(左)と、社員の感染を公表した企業のホームページのコラージュ
 新型コロナウイルスに従業員らが感染した際、岡山県内の企業がホームページ(HP)などで事実を公表する動きが広がっている。山陽新聞社の集計では、県内の感染者25人(無職や自営業を含む)のうち、少なくとも10人について公表されており、専門家は「感染リスクを下げることにつながり、企業としての社会的使命を果たしている」と評価する。一方、公表によって企業の活動に影響が出たり、当事者が中傷されたりするケースもある。

 「地域の顧客と接する業務の性質上、感染拡大を防ぐために公表することが企業の責任だ」

 県内で44日ぶりとなった感染者を岡山市が発表した24日、野村証券(東京)はその日のうちに、感染したのは岡山支店勤務の社員と自社HPで公表、取材に対し、広報担当者はこう言い切った。

危機管理

 企業に従業員の感染を明らかにする法的義務はないが、自主的な公表が相次ぐ背景には、顧客や取引先への感染防止に加え、企業としての危機管理意識もある。

 ジーンズメーカーのジャパンブルー(倉敷市児島味野)は3月下旬、県外出張から戻った従業員の感染をHPで発表。「公表せずに後で発覚すれば、地域や取引先から不信感を持たれる。出せる情報は最大限出そう」と踏み切ったという。

 その後、同社に対しては「県外から岡山にウイルスを持ち込んだ」との電話もあったが、広報室の木村克也課長は「むしろ取引先からは『大変だったね』と励ましの声を掛けてもらうことの方が多かった」と話す。

 県もこうした企業側の対応を「住民の安心につながる」と受け止める。感染に関する自治体の発表では、職種や勤務先をプライバシー保護の観点などから明らかにしておらず、県の担当者は「企業の公表が県民の知りたい情報を補足してくれることもある」とする。

方針共有

 ただ、公表によって会社や従業員が差別的な対応や誹謗(ひぼう)中傷に遭うケースもある。

 県内のある企業は従業員の感染を公表後、事業所の清掃や荷物の集荷を委託する業者が一時、業務を見合わせたという。担当者は「不安は分かるが、会社自体がウイルスのように扱われた気がして残念だった」と語る。

 さらにネット上では、勤務先が明らかになったことで「職場へ行って辞めさせてやる」といった書き込みや、「県外客の多いパチンコ店の常連だった」と個人を特定したかのような中傷も見られた。

 関西大の亀井克之教授(リスクマネジメント論)は公表の動きについて「不祥事の隠蔽(いんぺい)と同じで、公表しないリスクの方が高いとして、ある程度の影響を覚悟の上で公表するケースがほとんどだ」と指摘。その上で「感染者のプライバシーを守ることも重要。流行の第2波に備え、公表方針を従業員と共有しておくべきではないか」としている。

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(2020年06月29日 08時03分 更新)

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