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岡山音楽界、発表の場求め工夫 小規模公演や動画配信支援

瀬戸内アーツカウンシルが音楽家を派遣して開いた演奏会=23日、岡山市
瀬戸内アーツカウンシルが音楽家を派遣して開いた演奏会=23日、岡山市
県演奏家協会が配信するアンサンブル動画のテスト収録を行う畑山
県演奏家協会が配信するアンサンブル動画のテスト収録を行う畑山
森野(左上)が配信している世界各国で活躍する音楽家たちのオンライン対談
森野(左上)が配信している世界各国で活躍する音楽家たちのオンライン対談
 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言は解除されたが、演奏会での3密(密閉、密集、密接)の回避が難しい音楽界は影響の長期化が予想される。岡山県内では出演者、聴衆の人数を抑えた小規模な公演のあり方を模索したり、主流となりつつあるインターネットでの動画配信を支援したりする動きが芽生えている。

 クラシックの名曲にジブリ音楽、テレビ番組の主題歌。23日、岡山市のマンションで開かれた演奏会で、親子ら17人がバイオリンの長坂拓己(32)=倉敷市、チェロの柳橋泰志(33)=同=の二重奏に聴き入った。

■鑑賞時はマスク

 音楽を通じた地域振興に取り組む市民団体「瀬戸内アーツカウンシル」(瀬戸内市)が5月上旬から始めた音楽家派遣事業。派遣を依頼する際は事前に聴衆の人数を決め、鑑賞時はマスクを着けることなどが条件だ。演奏時間は1回40分前後と短めで、出演も4人までに限定するが、楽器の編成はリクエストに応じる。料金は奏者1人当たり1万5千円から。

 この日は子育てグループ6家族が協力して利用。ある女性(41)=同県早島町=は「普段と違う生活を強いられる中で、感じていた疲れが洗い流されたよう」と話した。

 「文化芸術は不要不急と言われるが、生きるのに必要なのは衣食住だけではない。感染リスクを抑えつつ、生演奏だから伝わるエネルギーを届けたい」と発案者の玉垣夫規子・同団体プロデューサー(71)=岡山市。既に10件程度の問い合わせがあり、手応えを感じているという。

■気持ちを明るく

 コロナ禍により、県内で中止・延期された演奏会は優に100を超える。政府は25日、段階的にコンサートなどのイベントを再開する指針を示したが、合唱、オーケストラなど出演者や聴衆が近接する音楽活動の再開にはまだ不安が強い。

 発表の場を求める若い音楽家を中心に、オンラインでの演奏配信が活発になる中、県演奏家協会の佐々木英代会長(78)は「機器を扱う技術の有無で、発信力に格差が生じている」と指摘する。協会はより幅広い音楽家が発信できるよう、県文化連盟の協力を受けて演奏動画を配信する体制づくりに今月から乗り出した。

 協会がアンサンブルを企画し、声楽、管弦楽、打楽器奏者など約40人の所属会員に録画を打診。提供された動画を文化連盟が編集し、ウェブ上への公開までを担う。連盟は「スマートフォンやタブレット端末があれば撮影は難しくない。同様の悩みを持つ他団体の参考にもなれば」と期待する。

 6月に配信予定の第1弾は声楽、ピアノ、マリンバの三重奏による山田耕筰の童謡「待ちぼうけ」。15日にはテスト収録があり、ソプラノ歌手畑山かおり(51)=岡山市=が、スマートフォンでつないだピアニストの演奏に合わせ歌唱の撮影に挑戦した。畑山は「やってみると何とかなりそう。難しい時期だが、動画配信を通じて音楽活動を続けるモチベーションを高め合えれば」と話す。

 佐々木会長は「社会の不安が高まっている時こそ、心を癒やし、気持ちを明るくしてくれる音楽が力を発揮する。我慢と工夫を重ねながら、再び多くのファンと生のコンサートを楽しめる日を待ちたい」と話す。

 ◇

 国内外で活躍する岡山県出身の音楽家たちも、オンラインの強みを生かした特色ある動画配信に取り組んでいる。

 バイオリニスト岸本萌乃加(26)=倉敷市出身、東京=は、長坂拓己、谷口拓史(コントラバス)ら共演経験のある岡フィル団員とともに、互いの演奏を組み合わせた動画をSNS(会員制交流サイト)で公開。「舞台に立てない中、大好きな古里の人にも少しでも楽しんでもらいたい」と話す。

 ウィーンを拠点とするソプラノ森野美咲(31)=岡山市出身=は、「海外在住のアーティストの現状を紹介し、励まし合えれば」とバスバリトン木村善明(倉敷市出身、ドイツ在住)ら複数の音楽家とウェブ会議アプリでの対談を企画。各国の文化芸術への支援体制、公演中止が相次ぐ中での時間の使い方などについて語り合い、ユーチューブで配信している。

 倉敷市出身のピアニスト松本和将(40)=東京=は「心引かれる音楽に出合うきっかけになれば」と、オンラインで視聴できるホロビッツ、グールドら名ピアニストの演奏をブログで連日紹介。並行して、自身のコンサートや楽曲解説を定額制で公開する「オンラインサロン」を開設した。「コロナ禍は、大ホールに聴衆を集めることが評価された音楽のあり方を変えるのでは。単に演奏を配信するのではなく、お金を払ってでも聴きたい、と思えるコンテンツの充実と、日頃からのファンとの密な関係づくりも大切になる」という。

(2020年06月01日 14時06分 更新)

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