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「曇らぬ鏡」鉄道安全守り30年 岡山の異業種企業連携で開発

線路沿いに設置されている「くもらーず」
線路沿いに設置されている「くもらーず」
谷口商会の本社敷地に展示されている「くもらーず」を見る谷口氏(右)とテクノ21の藤井社長
谷口商会の本社敷地に展示されている「くもらーず」を見る谷口氏(右)とテクノ21の藤井社長
 岡山県内企業の異業種連携で30年前に生まれ、全国の鉄道で使われ続けるロングセラー商品がある。駅ホームや線路沿いに立つ安全確認用のミラー「くもらーず」だ。内蔵した蓄熱材が鏡面の結露を防ぎ、名前の通り曇らない。改良を重ね、最新型は寒冷地でも電気不用の省エネ性を実現している。

 発売は1990年。異業種連携を進める県の「技術交流プラザ」に参加した放送通信・医療機器の山陽電子工業(岡山市)▽アルミ部品の光軽金属工業(同)▽自動車部品の水島プレス工業(倉敷市)▽精密加工の長崎鉄工所(備前市)▽環境緑化製品の日本植生(津山市)▽産業資材の森下(瀬戸内市、2015年に日本マタイに吸収合併)―の製造業6社が共同開発した。

 当初は道路のカーブミラー用に販売したが、目先を変えて売り込んだ鉄道会社で当たった。1987年の国鉄分割民営化で発足したJR各社が、経営改善で車掌のいないワンマン車両を増やしていたこともあり、運転手の安全確認に役立つと大口受注を獲得。首都圏や関西などの私鉄からも注文が入るようになった。

 開発6社の出資で設立したテクノ21(岡山市)が製造を引き継ぎ、油吸着材などのメーカー・谷口商会(同)が販売を担当。両社で協力してモデルチェンジを繰り返しながら普及させてきたが、「他社の模倣品と競合するなど、楽な道のりではなかった」とテクノ21の藤井勝正社長(78)。「どんな場所でも使えるよう性能を磨き続けたからこそ、ロングセラーになった」と振り返る。

 結露は、鏡面の温度が気温より下がり、空気中の水蒸気が凝結することで起きる。初期の「くもらーず」は、ミラー内部に注入した水が昼間の太陽熱で温められ、夜間の温度低下を抑えるシンプルな仕組みだったため、昼夜の温度差が大きかったり、湿度が高かったりすると結露が発生する場合もあった。

 そこで、遠赤外線を発する素材を組み込み、蓄熱と放熱の微妙なバランスが取れるよう設計を見直すなどモデルチェンジを繰り返して性能を高めた。寒暖差が激しく多湿な高野山(和歌山県)などで実験して効果を確認。2019年4月に完成した最新型は、従来製品なら電気ヒーターを併用しなければならなかった寒冷地でも結露しないという。

 「くもらーず」事業を担当する谷口商会前社長の谷口亀三郎氏(84)は「電気を使わない省エネ性は、環境を重視する時代のニーズとも合致する。現在は鉄道分野で20~30%程度の全国シェアを、80%に高めたい」と力を込める。

 地場企業が力を合わせた曇らぬ鏡。岡山発の技術は、今日も鉄道の安全運行を助けている。

(2020年05月29日 11時51分 更新)

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