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病室で快方信じ不安と毎日闘った 岡山県内の感染者が本紙取材に証言

新型コロナウイルス感染症の療養生活を「毎日が不安との闘いだった」と振り返る男性
新型コロナウイルス感染症の療養生活を「毎日が不安との闘いだった」と振り返る男性
 新型コロナウイルスに感染し、その後に回復した岡山県内の男性が、26日までに山陽新聞社の取材に応じた。効果的な治療法が確立されていない状況に「病室で一生暮らすのかという不安と毎日闘っていた」と明かした。一方、インターネット上などで横行する患者や医療関係者らへの誹謗(ひぼう)中傷については「今も家族に被害が及ばないか心配だ」と語った。

 男性は仕事でやむを得ず県外を訪れ、岡山に戻って高熱が出た。インフルエンザを疑って病院を受診したが、検査は陰性。1週間たっても熱が下がらず、別の病院で肺炎の所見が見つかった。新型コロナのPCR検査で陽性反応が示され、その日のうちに入院した。

 外出時にはマスクを着用するなど予防に努めてきた。行政などが自分との接触者を調べたが、感染を疑われる人はいなかった。「いつ、どこで感染したのか。注意しても防げない恐ろしいウイルスと痛感した」

 治療は発熱などの症状を和らげる対症療法が中心だった。当初の1週間ほどは熱が38~39度台を行ったり来たりで、解熱剤も一時的にしか効かなかった。「常にジョギングをしているような」息苦しさが続き、酸素吸入器が手放せなくなった。

 ある時、医師から「万が一に備えて家族と連絡を取っておいてほしい」と告げられた。さらに重症化すれば人工心肺装置(ECMO=エクモ)を使用することになり、気管切開で声がうまく出せなくなるかもしれない、との説明だった。

 心配を掛けたくないと、あえて連絡はしなかった。「絶対に良くなる」。怖くて寝付けない夜は、そう自分に何度も何度も言い聞かせて不安を抑え込んだ。「特効薬がない中、自分の気持ちが切れたら終わりだと思った」

 幸いにも次第に症状が改善し、エクモを使うこともなく数週間後に退院することができた。「感染の恐怖と闘いながら支えてくれた医療従事者には感謝してもしきれない」と語る一方、容体の急変に備えるためとはいえ、「部屋から一歩も出られず、カメラで四六時中、監視されるのはつらかった」と打ち明ける。

 その後に職場復帰を果たしたものの不安は拭い切れないという。同僚との接触を避けるため個室で業務をこなしているが、「周囲には自分からの感染を心配する人がまだ多くいる。いつまでこの状況が続くのか」。感染者がスムーズに日常に戻れるよう、行政には復帰への段階的な目安を示してほしいと望む。

 新型コロナを巡っては、感染者らへの差別や中傷が問題化している。この男性の感染を公表した勤務先には「社員が県外からウイルスを持ち込んだ」といった電話が相次いだ。ただ、男性自身にバッシングが集中することはなく、「会社が受け皿になってくれた。本当に助けられた」と話す。

 今は家族が地域や学校で不当な扱いを受けないかが心配でならないという。「『コロナに感染することは悪いこと』という社会の空気が気になる。誰もが望んで感染してはいないことを分かってほしい」と切実な声を上げる。

(2020年05月27日 08時00分 更新)

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