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本紙取材に死亡患者の妻「悔しい」 岡山市民病院の緊急再手術

本紙記事で夫の再手術の経緯を知り、悔しさをにじませる妻
本紙記事で夫の再手術の経緯を知り、悔しさをにじませる妻
 岡山市立市民病院(同市北区北長瀬表町)で2016年12月、がんの摘出手術を受けた患者が合併症を引き起こし、緊急の再手術を行ったケースが1週間に3件相次いだ問題で、うち1件の再手術で人工肛門を造設した男性の妻(79)が、22日までに山陽新聞社の取材に応じた。男性は術後、目に見えて体が弱り、昨年75歳で死去したという。妻は、複数の専門医が「医療事故と言える」と証言したことを報じた2月の本紙記事で初めて経緯を知り、「本当に悔しい」と涙ながらに語った。

 手術の関連資料などによると、3件はいずれも同じ医師が執刀していた。男性は大腸がんを摘出した際、本来温存するべき動脈を切断され、血流が途絶えて大腸の一部が壊死(えし)。そのため再手術で大腸の大部分を切除し、人工肛門を取り付けた。病院側はこれまでの取材に「医療的な過失はなかった。男性も家族も手術の結果に納得し、不満は抱いていない」としている。

 だが妻によると、男性は手術後に「失敗したのではないか」と漏らしていたという。妻にこの医師から手術について説明はあったが、「説明は専門的な医療用語が多く、気後れして聞きたいことを聞けなかった。『手術に問題はなかったのだろう』と受け入れるしかなかった」と話す。

 退院後の生活負担は想像以上に重かった。人工肛門は排便用の袋の取り換えが1日に何度も必要で、常に衛生管理に気を配らなければならない。遠出が難しく、買い物や食事へ出掛ける機会が減った。翌年8月に人工肛門を閉鎖した後も、徐々に食欲が減退し、歩くこともおぼつかなくなったという。「運動が得意で元気な人だっただけに、弱っていく姿を見るのがつらかった」

 病院側は取材に対し、手術と男性が弱って亡くなったこととの因果関係を否定している。それでも妻は「あの時、適切な処置が行われていれば、今も生きて隣にいたのではないかと思えてならない。何も知らずに亡くなった夫が本当にふびんです」と語る。

 ◇

 2月の本紙報道では、男性のケースを含む3件の手術について、岡山県内の複数の専門医が第三者の立場で取材に応じ、手術に関する資料などから「いずれも医療事故と言える」と指摘している。医師を巡ってはその後にがんを摘出した別の患者が術後に死亡し、術式に誤りがあったなどとして遺族が損害賠償を求めて昨年10月に提訴。病院側は請求の棄却を求めている。

(2020年05月23日 06時00分 更新)

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