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激減も生業に精出す葉タバコ農家 60年前に県内2万戸、今は6戸

葉タバコ畑の前で思いを語る森脇さん(右)と仲岡さん=5月19日
葉タバコ畑の前で思いを語る森脇さん(右)と仲岡さん=5月19日
成長した葉タバコの苗を確認する森脇さん=5月19日
成長した葉タバコの苗を確認する森脇さん=5月19日
三角キャップがかぶせられた葉タバコの苗。白く染まった畑が広がる=4月3日、高梁市川面町
三角キャップがかぶせられた葉タバコの苗。白く染まった畑が広がる=4月3日、高梁市川面町
葉タバコの苗を植え付ける森脇さん夫婦=4月3日
葉タバコの苗を植え付ける森脇さん夫婦=4月3日
激減も生業に精出す葉タバコ農家 60年前に県内2万戸、今は6戸
 岡山県でかつて盛んだった葉タバコ栽培が、縮小の一途をたどっている。「たばこ離れ」や生産者の高齢化・後継者不足により、60年前に約2万戸あった農家は6戸にまで激減した。受動喫煙対策を強化する改正健康増進法が4月に全面施行され、新型コロナウイルスの猛威もあり、嫌煙の流れは一層加速しそう。逆風が強まる中でも、数少なくなった生産者たちは「生業(なりわい)」に精を出す。

 高梁市川面町の葉タバコ畑。春先に植えた苗は高さ30センチほどに成長し、大きな葉を付けている。十分に栄養が行き渡るよう、農家の森脇敬治さん(68)は余分な芽や雑草取りに追われている。夏場はこの作業が欠かせない。

 葉タバコは父の代から約50年続けている。森脇さんは高校卒業後、会社勤めをしながら家業を守ってきた。苗を育てて収穫し、乾燥させ、出荷。冬場は畝の手入れと年中続く作業は変わらないが、産地の姿は昔とはずいぶん違ってきた。

 かつては川面町地区だけでも100戸近くが手掛けていたと記憶しているが、今では市内全域で2戸だけ。「寂しい。高齢になるときつい仕事だし、後継者も少ないのだろう」と話す。

 中国5県と滋賀県の農家でつくる西日本たばこ耕作組合(鳥取県米子市)などによると、岡山県内の葉タバコ農家は1958年度に1万9453戸を数えたが、現在は高梁市と久米南町に各2戸、新見市と美咲町に各1戸。66年度に4949ヘクタールだった耕作面積も現在は4・35ヘクタールで、0・1%以下にまで激減した。

 健康志向の高まりなどを背景に、たばこ離れは平成に入って一気に進んだ。日本たばこ産業(JT)の全国調査によると、89年度に男性の喫煙率は61・1%(女性12・7%)だったが、2018年度には27・8%(同8・7%)に。葉タバコの全量買い取りが義務付けられているJTは、需給バランスを調整するため、過去6回にわたり、減作・廃作を募ってきた。農家がこれに応じたことや高齢化・後継者不足が産地縮小の要因とみられる。

 「他の作物をやるにも金がかかるし、作り方も分からなかった。自分にできるのはこれだけ」。高梁市内のもう1戸の葉タバコ農家仲岡卓己さん(74)=同市川面町=は言う。

 改正健康増進法の全面施行で、飲食店や職場などが原則、屋内禁煙となった。新型コロナウイルスでは、喫煙で重症化のリスクが高まるとの報告もある。嫌煙社会の風潮がさらに強まる中でも、農家は黙々と家業に汗を流す。

 「春先には霜よけの三角キャップを苗にかぶせる。それが連なる産地の風景を毎年、撮影に来てくれる人がいて心の支えになっている。元気なうちは作ろうと思う」と森脇さん。仲岡さんも「手を抜かず、いいものを作るだけ。あと10年ぐらいかもしれないが、体力の続く限り続けたい」と思いを語る。

(2020年05月23日 07時00分 更新)

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