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桃太郎絵巻にアフレコ入れたら 岡山県立美術館収蔵品展のパネル展示話題

 岡山県立美術館(岡山市北区天神町)で開催中の「岡山の美術展(収蔵品展)」で江戸時代(18世紀)の「桃太郎絵巻」全2巻が公開されている。約20メートルに及ぶ展示もさることながら、絵巻の部分をピックアップ、「よっ」「ぺこぺこ」など一言添えて説明した愉快なパネル展示が話題になっている。展示を担当した同館の八田真理子さん(27)の案内で絵巻を楽しんだ。

パネル展示の一部。左上から時計回りに、動物たちと出合う桃太郎▽いつの間にか服を着て桃太郎と同じ大きさになった動物たち。キジは一行に遅れがち▽鬼ケ島で大暴れの桃太郎ら。腕が落ちた鬼の姿も▽桃太郎らに宝物を貢ぐ鬼たち
パネル展示の一部。左上から時計回りに、動物たちと出合う桃太郎▽いつの間にか服を着て桃太郎と同じ大きさになった動物たち。キジは一行に遅れがち▽鬼ケ島で大暴れの桃太郎ら。腕が落ちた鬼の姿も▽桃太郎らに宝物を貢ぐ鬼たち


 ―パネルは全部で9枚。多からず少なからず。添えられた言葉も短いけれど軽妙です。

 八田 パネルは多すぎると実物をよく見ないようになりますから。一言は、アニメにアフレコ(せりふなどを事後録音すること)する感覚ですね(笑)。

 ―そういえば岡山市出身の高畑勲氏がアニメの起源を日本の絵巻物に求めていました。そこらあたりですか?

 八田 ウフフ。では絵描きの世界へ参りましょう。川でおばあさんが青みがかったモモを拾います。これは仙薬。不老不死、若返りのアイテムです。これを食べて若返ったおじいさんとおばあさんになんと桃太郎が誕生。

 ―おじいさん、うれしそう(笑)。

 八田 大きくなった桃太郎は鬼ケ島へ向かいますが、見送る村人たちも描かれます。

 ―桃太郎、人気者!

 八田 展示品は桃太郎絵巻としては初期のもの。こういう脇の人物を描いているのも楽しい。描き手は狩野派。色使いは比較的上品で描線も訓練された絵師のもの。画面と画面をつなぐ墨のかすみも幽玄です。

 ―桃太郎はイヌ、サル、キジと出会っていきます。

 八田 よく見ると一行からキジが遅れていますね。で、「待って~」(笑)。後で出てきますが、飛ぶのも下手。飛ぶと言うより浮遊(笑)。気になる存在です。動物たちが劇的に変身しているのに注目です。

 ―あっ、2足歩行、しかも服を着て刀を差している!

 八田 体も桃太郎と同じ大きさですよ。

 ―結構な武装勢力。鬼ケ島へ討ち入ると、鬼たちが逃げ出すのも無理はない感じです。

 八田 サルが鬼を羽交い締め。鬼たちが弱くて気の毒な感じがしませんか?

 ―確かに桃太郎たちはかなり乱暴ですね。

 八田 片腕が落ちた鬼もいて…。

 ―それで「あいたたた…」って(笑)。弱った鬼たちは宝物を貢いでいますね。

 八田 これは中国皇帝へ異国人が朝貢するイメージが源泉ですね。イヌが鬼たちを指さすしぐさがまたいやな感じでしょ(笑)。

 ―若々しかった桃太郎の顔が、尊大な征服者の顔になっていますね。戦は人間を変える、ということかな。なんか深い、この絵巻。

 八田 少し「毒」のあるこの絵巻に自分なりにアフレコしていくといろんな発見があるかもしれませんよ。

 ―この絵巻は以前も見たはずなのに…見落としていたことが多いのに反省です!

八田真理子学芸員
八田真理子学芸員


 岡山の美術展は5月24日まで。倉敷市出身の美術家松井えり菜さん=東京在住=による「令和おとぎ草子『桃太郎』」(7月12日まで)の特別展示に合わせて企画された。

(2020年05月15日 10時30分 更新)

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