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倉敷起源の「労研饅頭」継承を 備前の洋菓子店閉店、惜しむ声

ニブベーカリーが販売していた労研饅頭。伝統的な「4個一包み」の品も
ニブベーカリーが販売していた労研饅頭。伝統的な「4個一包み」の品も
惜しまれつつ営業を終えたニブベーカリー=備前市西片上
惜しまれつつ営業を終えたニブベーカリー=備前市西片上
 実業家・大原孫三郎が設立した倉敷労働科学研究所で昭和初期に考案された「労研饅頭(ろうけんまんとう)」の製造を、創業時から手掛けてきたパン・洋菓子店「ニブベーカリー」(備前市西片上)が今月、84年間の営業に幕を下ろした。経営者の高齢化などが理由だが「意欲のある人がいれば、製造法を伝えたい」と、歴史が詰まった名物の継承先を探している。

 同店は丹生実社長(71)の祖父・一二(いちじ)さんが1936(昭和11)年に創業した。同市の片上商店街での営業を経て、大型商業施設・アルファビゼンに出店。同施設が閉店した2002年、現在の店舗に移った。労研饅頭を正式名称とする「ローマン」が看板商品で、長年にわたって地域住民に愛された。

 蒸しパンの一種・労研饅頭は小麦粉を主成分とし、素朴な甘さと軟らかな食感が特徴。倉敷労働科学研究所の初代所長を務めた暉峻義等(てるおか・ぎとう)が労働者の栄養食として考え出し、1930(昭和5)年ごろには全国で製造された。

 創業時から正式認可の権利を得たニブでは、原料不足となった戦時中を除いて労研饅頭を作り続けてきた。労研饅頭について研究している岡山空襲展示室(岡山市)の猪原千恵学芸員によると、現在も製造しているのは松山市の業者と県内の数店で、ニブでは同研究所が指定した「4個一包み」という伝統的なパッケージも伝えてきた。「岡山の人に愛された食品。閉店は大変残念で、これまでありがとうという気持ち」

 倉敷発祥の食品として、地域に再び定着させようとする高校生の取り組みにも協力してきた。倉敷商業高商業研究部が発案し、2010年から朝市で販売している「倉敷浪漫(ローマン)」。当時担当教員の一人だった川井敏之校長は「依頼先がなかなか見つからない中で、ニブさんが製造を引き受けてくれた。ここでやめざるを得ないのは残念」と惜しんだ。

 最後の営業となった4日は、朝から常連客が次々と訪れ、午後6時の閉店前には全ての商品が売り切れた。閉店後、近所の住民や友人らがお別れの会を開き、丹生社長に花束を贈った。

 丹生社長は「この年まで頑張れたのは皆さんのおかげ。ローマンを後世に伝えるのが最後の責任と思っている。続ける情熱がある適任者を探したい」と話している。

(2020年04月16日 18時15分 更新)

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