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天災は親しい人との仲を突然、断…

 天災は親しい人との仲を突然、断ち切る。東日本大震災で被災した岩手県大槌町には、会えなくなった人に思いを伝える電話ボックスがある▼亡くなったいとこと話したいとガーデンデザイナーの男性が自宅の庭に設けた。中にあるのは、実際には線のつながっていない電話だ。だが、「天国につながる電話」として震災以降、3万人超が訪れたという▼これをモチーフにした映画「風の電話」を岡山市内で見た。家族を失い、深い喪失感を抱えた高校生の少女が、身を寄せた広島から故郷の大槌町まで旅をする物語である。心を再生させて、風の電話で「私は生きるよ」と家族に語る姿が印象的だった▼悲しみを抱く人を支える「グリーフケア」への共感は、日本だけではない。映画は2月のベルリン国際映画祭で、若者向け作品の部門で特別表彰を受けた▼ただ、世界中で死者が2、3日に1万人以上増える新型コロナウイルス感染症では、遺族のケアまで十分に手が回らず、葬儀も禁じられた国さえある。日本でも、タレント志村けんさんの遺族が、感染予防のために遺体と対面できないまま火葬されたと語る姿は痛々しかった▼亡き人とつながれるという思いが人に生きる希望を与える―と、風の電話の設置者が映画のパンフレットに書いている。そんな場を求める人は今、多いに違いない。

(2020年04月09日 07時30分 更新)

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