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介護保険20年 かすんだ「社会化」の理念

 高齢者らの介護を家族で抱え込まずに社会で支える。そんな理念で始まった介護保険制度が今月で20年を迎えた。

 高齢化とともに費用の膨張と介護の人手不足が顕在化し、政府は利用者らの負担増やサービスの縮小などを繰り返してきた。その結果、「介護の社会化」はかすんだと言わざるを得ない。いま一度、原点を再確認すべきだ。

 40歳以上が支払う保険料と税金、利用者負担でサービスを賄う制度が2000年に始まった背景には、介護は嫁が担うものとの風潮にあらがう市民運動の広がりがあった。

 以来、訪問、通所介護や特別養護老人ホーム(特養)への入所などさまざまなサービスを、必要度に応じて選べるようになった。介護産業が定着し、他人の世話を受ける抵抗感が減ったことを制度の功績に挙げる識者もいる。

 一方で介護需要は増した。岡山県内の要介護認定者は00年4月の4万7千人から今年1月に11万9千人、介護給付費は00年度の678億円から18年度の1704億円へ、ともに2・5倍になった。

 先行きへの心配は広がっている。共同通信が2~3月、都道府県庁所在地と政令市に行ったアンケートでは、回答した50自治体のうち、1自治体を除いて制度の維持、存続を「懸念する」と答えた。

 特に深刻なのが介護職員の不足だ。団塊の世代が全て75歳以上になる25年度に全国で245万人程度が必要だが、現状のままでは34万人が足りない。岡山県内でも約4千人が不足するという。政府は賃金の引き上げを図ってきたものの、大きな効果があったとは言い難い。

 介護費用の膨張は保険料アップにもつながる。3年に1度の制度見直しでは、利用者負担の割合を一律1割から一定の収入がある人は2割、さらに現役並みに所得が高い人は3割に上げた。介護の必要度が軽い要支援1、2の訪問、通所介護は全国一律のサービスから市区町村の事業に移し、特養は新規入所を原則、要介護3以上に限った。

 制度の将来について国民的議論が必要なのは確かだ。21年度の実施は見送られたが、2割負担の拡大や介護の必要度がより重い人の訪問、通所介護を市区町村事業に移すことなどが将来、再び検討される可能性もあろう。ただ、介護の社会化がうたわれながら、家族の介護のため離職する人が年10万人おり、介護疲れによる虐待が後を絶たないことを忘れてはならない。

 政府は今後、介護事業者に払う介護報酬の来年度改定の検討を、自治体は21~23年度のサービス見込み量や65歳以上の保険料などの計画づくりをそれぞれ進める。サービス効率化や職員の待遇改善、高齢、外国人材の活用などを地域の実情に合わせて探ってもらいたい。理念では介護から解放したはずの家族を、再び人的資源とするような見直しは避けるべきだ。

(2020年04月06日 08時00分 更新)

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