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中学の教科書 「深い学び」へ環境整えよ

 2021年度から中学校で使われる教科書の検定結果が出た。全面実施される新学習指導要領が掲げる「主体的・対話的で深い学び」を後押しする工夫が随所ににじむ内容だが、指導していく上での課題も浮かぶ。

 今回の検定には115点の申請があり、文部科学省の検定意見による修正などを経て106点が合格した。その全体に流れるのが、教員による一方通行的な知識詰め込み型授業から対話を通した学びへの転換である。

 英語では「読む・聞く・書く・話す」といった4技能について、より実践的な「使える英語」を身につけることに力点を置く。そのため、ハンバーガーショップでの注文など日常的な場面の設定や、即興の会話を促すといった工夫がうかがえる。

 今春から小学校高学年で英語が教科となる。それを受け継ぐ21年度からの中学校教科書では、単語が大幅に増えて内容も高度になる。さまざまな仕掛けからは生徒に興味や意欲を持たせ、懸念される「英語嫌い」を減らしたいとの思いが伝わってくる。

 生徒に課題の深掘りや議論を促す記述も目を引く。社会の歴史では、江戸時代の赤穂浪士事件を取り上げ、あだ討ちをした浪士への処分を考えて議論する中で当時の社会を多面的に考察させる例もみられた。

 相次ぐ自然災害も、各教科で題材に取り上げられた。自分が住む地域のハザードマップを調べるとか、過去の災害を伝える石碑を訪ねるといった活動を促している。自然災害の脅威に生徒を「自分事」として向き合わせるのが狙いだ。防災意識を高める上で役立とう。

 思考力や対話を重視する方向性はうなずける。教科書には生徒が深く考え、それを分かりやすく表現するこつなど授業の進め方も丁寧に記されている。使いやすさを感じる教員は多かろう。

 ただ、こうした内容の充実に伴い、中学の3年間で学ぶ各教科の平均ページ数の総量は1万1280ページ(A5判換算)に及ぶ。前回から7・6%増え、文科省内の記録で比較できる04年度検定以降で最多となった。

 一方、授業時間数は現指導要領から変わらない。生徒にテーマを掘り下げてじっくり考えさせるには時間が必要だ。消化不良や学力格差の拡大を招かぬよう、めりはりをつけた指導が必要だろう。

 さらに、教員が教科書に示された手順に頼りすぎるようなら、目指す「主体的で深い学び」の実現はおぼつかない。何よりも教員自身が主体性を発揮し、発問や授業の展開を工夫すべきだ。

 多くの創意工夫が込められた教科書を十分生かし、授業に新風を吹き込んでほしい。そのためにも、国や行政は研修の充実や、学校現場のゆとりづくりなど環境整備に一層力を注ぐよう求めたい。

(2020年04月05日 08時00分 更新)

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