岡山発映画ニュース
倉敷出身の平松映画監督が新作 「あの日のオルガン」22日公開

戸田は責任感が強く、大原は天真らんまんな保母役。「互いが照射し合って作品が成り立つ。その役割を見事に体現してくれた」と話す平松監督

映画「あの日のオルガン」の一場面=(c)2018「あの日のオルガン」製作委員会)
日に日に空襲が激しくなる1944年。学童疎開は始まったものの、まだ幼く疎開の対象となっていなかった未就学児を守るため、園児53人を連れて埼玉の無人寺へ移った保母らがいた。前例のない「疎開保育園」を舞台に、小さな命と24時間向き合いつつ、親や疎開先住民の理解・協力を得るため奔走し、食糧不足など幾多の困難に立ち向かうヒロインたちを、ダブル主演の大原櫻子、戸田恵梨香らが演じる。
監督・脚本の打診を受けた平松監督は、当時の関係者を取材した原作(久保つぎこ著)を読み、「20代の女性たちが自分たちで考え、周囲を巻き込んで行動に移した。現代でも難しいことを、不自由な時代にやってのけたのはすごいこと」と感銘を受けたという。
撮影は昨年3月から約1カ月間。「保母役の女優陣に園児たちとの関係を築いてもらい、芝居を任せた」。そのため、一番の見どころは「子どもたちの輝き」と話す。劇中、親元を離れた寂しさを抱えながらもはしゃいだり、けんかしたり、無邪気な表情をみせる姿が映し出される。誰もが自分のことで精いっぱいだった時代、保母たちは子どもたちの笑顔に突き動かされ、奮闘する。
岡山大理学部を卒業後、東京での会社員生活を経て1992年に山田組入り。助監督見習いから始まり、「母べえ」(2008年)、「おとうと」(10年)、「東京家族」(13年)などで山田監督と共同脚本を手掛け、人と犬との絆を描いた「ひまわりと子犬の7日間」(同)で初監督を務めた。
戦争を題材にした映画は重く苦しい印象を持ちがちだが、今作では保母たちが笑ったり、怒ったり、友情が生まれたり。「戦時中とはいえ、そこには生活があったわけですから」と、クスッと笑える若い女性たちの日常を丁寧に描いたのは、山田監督とともに映画づくりをしてきた影響だという。
「彼女たちが守った命が戦後復興の一翼を担い、昭和から平成という時代をつくり上げた。私たちはそれを引き継ぎ、良い時代にしていると言えるでしょうか。今一度考えてみてほしいですね」
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MOVIX倉敷などで公開予定。
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