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犬のアトピー性皮膚炎

 動物も、食物やノミ、ハウスダストなどが引き金となってアレルギー症状が出る。中でも近年増えているのが犬のアトピー性皮膚炎。春から秋にかけて症状が悪化しやすく、動物病院での治療件数も増える。中四国で唯一の日本獣医皮膚科学会認定医である、山陽動物医療センターの安川邦美副院長(38)に、症状の特徴や治療方法について聞いた。

バリアー機能低下が影響 アレルゲン除去し保湿を

 犬のアトピーは、ハウスダストに含まれるイエダニ、花粉などと接触または吸い込むことで過剰な抗体反応が起き、発症する。以前は、アレルギー反応を引き起こすIgE抗体が遺伝的に産生されやすい体質だと発症すると考えられていたが、近年の研究で、皮膚のバリアー機能低下が大きく影響していると分かってきた。

 アトピーを発症すると、皮膚の激しいかゆみや赤み、かきむしることによる脱毛などが起きる。ひどくなると、皮膚が乾燥してごわごわと硬く黒くなる。症状が出る部位に特徴があり、足指の間、脇、肘の内側、口や目の周辺、外耳道や耳のひらひら(耳介)の内側部分など。本格的な発症前に、外耳炎を繰り返すことも多い。発症年齢は3歳未満、遅くとも5歳まで。イエダニが繁殖する春~秋に症状が強く出る季節性の疾患でもある。

 アトピーは血液検査で抗体を調べるだけでは確定診断できず、判断が難しい。犬種や年齢、発症部位や症状が出た状況などを問診した上で、似たような皮膚疾患を起こす要因を除外して診断を下す。接触性アレルギーは首輪などが触れる部分に、ノミアレルギーは首や尾の付け根周辺にかゆみや炎症が起きやすく、アトピーと発症部位が異なるケースが多い。食物アレルギーによる皮膚炎はアトピーと同様の部位に加え、アトピーでは症状が出にくい背中にも症状が出ることが多い。アレルゲン食材を除去した専用食を約3カ月与え、症状が治まるか観察し、アトピーか食物が原因かを探る。

 アトピーの犬は他のアレルギー疾患を併発しやすい上、毛の根元に細菌が感染し炎症を起こす膿(のう)皮症、酵母菌感染によるマラセチア皮膚炎など別の皮膚病にも感染しやすい。診断に加え、原因も簡単には特定できない。

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 急性期治療には薬物療法を行う。かゆみや炎症を抑えるため、外用か内服でステロイド薬を処方するほか、免疫抑制効果のあるシクロスポリンを使う。症状が軽い場合やステロイド薬などを減らしたい場合は、内服の抗ヒスタミン薬を使う。免疫バランスの崩れを整えるインターフェロン療法や減感作療法で体質改善を図ることも。かゆみを強力に抑える分子標的薬も、近いうちに国内で流通することが期待されている。

 除外診断で使ったアレルゲン除去食を続ける食餌療法も効果的。抗体反応が起こりにくく、皮膚に負担をかけず栄養を取ることができる。食餌療法の間は、市販のおやつや飼い主の食事を食べさせるのは禁止だ。

 これらと並行し「最も重要なのはスキンケア」と安川副院長は強調する。2週間に1回程度、動物病院で、保湿剤や抗菌剤を含む専用シャンプー剤で全身を洗い、マイナス荷電の泡で汚れや細菌を取り除くバブルバスに入れることを勧めている。保湿によって、弱った皮膚のバリアー機能回復を助けると、症状が徐々に改善することが多い。

 アトピーはどの犬種も発症するが、特に多いのがシバ、レトリーバー系、ウエスト・ハイランド・ホワイトテリア、シーズー、フレンチブルドッグなど。症状が治りにくいケースでは「太っている犬が多いのも特徴」と安川副院長。肥満により皮膚がこすれやすく、炎症の引き金となる。治療の一環としてダイエットが必要だ。

 アトピーは若くして発症し根治は難しいため、10年以上付き合っていく覚悟がいる。軽い湿疹と放置して診断が遅れたり、症状が治まったからと治療を途中でやめると、慢性化しやすい。安川副院長は「治療には飼い主さんの努力が不可欠。症状を見つけたら早めに受診を」と呼び掛けている。

 ◇ ◆ ◇

<正しい自宅ケア>週2回シャンプー必要

 アトピーの犬の治療には、飼い主が自宅で行うケアが特に重要。安川副院長に正しいケアのやり方を聞いた。

 毎日行う必要があるのがブラッシング。アトピーになりやすいシバなどは特に毛の密集度が高く、無駄毛に(アレルゲンとなり得る)汚れがつきやすい。毛の清潔を保つため、散歩の前後など時間を決めて行う。ただ金属製のピンがついたブラシは、皮膚を傷つける恐れがあるので避ける。シリコーン製など軟らかい素材で目の粗いブラシを選ぶ。

 健康な犬なら月に1、2回のシャンプーでよいが、アトピーの犬は、動物病院で処方された専用剤を使い、自宅でも週2回はシャンプーすることが必要。

 体温より低めのぬるま湯(30~35度)で全身をぬらし、シャンプー剤を付ける。直接体に塗るのではなく、ボウルや洗面器で十分泡立ててから体にのせる。汚れを落とすよう全身をもみ洗いし、ぬるま湯で流す。もう1度全身にシャンプー剤をつけ、今度は5~10分そのまま置いて成分を浸透させる。風呂場など、ぬれても構わない場所で自由に歩かせておくと嫌がらない。最後にぬるま湯で流し、保湿剤を皮膚に塗る。ドライヤーは皮膚の温度を上げるため、極力使わない。どうしても使用するなら、冷風か距離を離して。

 保湿剤はシャンプー時以外にも使い、日常的に保湿を心掛けたい。

 家の清掃はこまめに。犬が過ごす生活場所全体を見直し、清潔を保つ。犬の寝床用の毛布やタオル、自宅のカーペットなどはイエダニがつきやすいので、定期的に洗濯や清掃、交換をする。

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 山陽動物医療センター
(赤磐市河本357の1、電話 086-955-1543)



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