文字

世界のニュースが身近な出来事に ヨルダンに住む友人の安否は…

どうやったら、こんなに背の高いものをあんなに細やかに彫り出せるのか…本当に摩訶不思議です

文中に登場するサハッド。木で家の枠を作り、壁の代わりに布をかぶせていました

ベドウィンが経営している遺跡内の売店。布やアクセサリー、水(町の売店の3倍くらいします!)が売られています

遺跡内はとても暑く、広いので移動手段として、ベドウィンが観光客をロバやラクダに乗せる商売があります。滞在4時間で夫婦合わせて6リットルも水を飲んだこの場所。洪水と土石流なんて今でも信じられません

 11月上旬、中東ヨルダン南部にある世界遺産・ペトラ遺跡で大規模な洪水と土石流が発生しました。このニュースを家で見て、私は青ざめました。「サハッド、大丈夫かな!?」

 昨年8月、私たちはペトラ遺跡にいました。夫が「世界一周中に行った、人間が作った場所の中で一番好き」と言うほど、2000年以上も前に砂岩をくり抜いて造られたこの遺跡群は、あまりにも壮大で、細やかで美しかったのです。

 このペトラ遺跡の中で、私たちは「サハッド」という1人の友人ができました。ヨルダンには砂漠を移動しながら生活する遊牧民「ベドウィン」がいるのですが、彼らは砂漠の真ん中に存在するペトラ遺跡の中でお土産や水を販売したり、観光客をロバや馬に乗せたりして商売をしています。25歳のサハッドも、そんなベドウィンの1人。彼はなんと5歳からペトラ遺跡で働きはじめ、13歳の時に1人で木を使って遺跡の中に店舗兼家を作り、生活を続けているのです。出身地・砂漠、住所・砂漠という、私の人生では出会ったことがない存在でした。

 彼の家にお邪魔し、お砂糖がたっぷり入ったミントティー「シャーイ」を飲み、彼に折り鶴をプレゼントし、拙い英語で少しずつ友達になっていく…。そんな忘れられない時間を過ごしました。

 洪水の現場は、優しい彼が暮らすペトラ遺跡でした。サハッドは携帯電話も住所も持っていなかったので連絡先は交換しておらず、彼の安否を知るすべがありません。死者も出たというこのニュースに「『次もこの場所で会おう』と約束したサハッド、誰かを助けるために水の中に入ってないかな…」と一抹の不安もあります。

 ニュースはいつも「遠いどこかの、知らない誰かのこと」でした。つらいニュースを知った瞬間は胸が痛んでも、だからといって私たちの次の行動を変えることは非常にまれです。しかし、それが「友達に起きた出来事」だったら? ペトラ遺跡での洪水と土石流。私の父と母にとっては「遠い国の出来事」。しかし私にとっては、ふるさと岡山県にも甚大な被害をもたらした西日本豪雨と同じくらい「身近な出来事」に感じたのです。

 アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで先日開かれ、安倍晋三首相も参加したG20首脳会合や、パリで起きた大規模な暴動。「そういえばブエノスアイレスに行った時にG20の看板があったな」とか「私たちが歩いたシャンゼリゼ通りや凱旋門でこんなデモが!? あそこの店主は大丈夫かな」など、帰国後、世界中のニュースが一気に「自分ごと」になりました。

 「愛の反対は憎しみではなく無関心」。マザー・テレサの有名な言葉ですが、このコラムが世界中のことを知ったり関心を持ったりするきっかけとなり、岡山から世界中へ、愛が増したらいいなと思っています。

 ◇

 武田悠佑(たけた・ゆうすけ)1987年岡山市生まれ。岡山大学医学部を卒業後、看護師として岡山大学病院に勤務。その傍ら、月に1度岡山市中心部の西川緑道公園にて開催されている「満月BAR」の立ち上げ・初代代表、またNPO法人タブララサ理事も務める。生まれも育ちも岡山市、という環境の中で「世界を見てみたい」と考えるようになり、2017年5月~18年9月、妻・小倉恵美と世界一周した。

 小倉恵美(おぐら・えみ)1989年美作市生まれ。学生時代には、全国で岡山県の観光PRを行う「おかやま観光フレンズ」や「おかやま桃娘」を務めた。20歳の時にケニアを訪れ「世界一周しながら世界中の人々の生活や価値観を知りたい」という夢が生まれる。2013年岡山大学教育学部卒業後、テレビせとうちに入社。記者を務め15年退職。

【岡山発 夫婦で世界一周!】の最新記事

ページトップへ

ページトップへ

facebook twitter rss

▼山陽新聞社運営サイト
さんデジタウンナビ | 岡山の医療健康ガイド | マイベストプロ岡山 | 47CLUB | さん太クラブ | おかやまリフォームWEB | LaLa Okayama
山陽新聞カルチャープラザ | 建てる倶楽部 | 山陽新聞進学ガイド | 山陽新聞プレミアム倶楽部 | まいられぇ岡山 | 囲碁サロン
▼関連サイト
47NEWS | 今日のニッポン
掲載の記事・写真及び、図版などの無断転記を禁じます。すべての著作権は山陽新聞社、共同通信社、寄稿者に帰属します。

Copyright © The Sanyo Shimbun. All Rights Reserved.