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(51)頭打ち(新見市) 舞う跳び子 各地で特色

獅子山八幡宮の頭打ち

艮神社の頭打ち

中山八幡神社の頭打ち

國司神社の頭打ち

松尾久人さん

 実りの秋。新見市内の神社では「跳び子」と呼ばれる子どもたちが収穫への感謝を込め、華やかないでたちで舞う季節となる。

 4人一組で、鉦(かね)の音に合わせて太鼓を打ち鳴らしながら、文字通り跳びはねるように踊る。市重要無形民俗文化財に指定されている「頭打(かしらう)ち」だ。「楽(がく)打ち」「渡り拍子」とも呼ばれ、市教委によると、市内14ほどの神社で繰り広げられている。

 10月にトップを切って奉納された獅子山八幡宮(哲西町矢田)では、花笠をかぶった12人が3張りの太鼓を囲んで舞い、多くの観衆を魅了した。同八幡宮楽打ち保存会の花田貴昭副会長(35)=同所=は「懐かしさを感じて、地区外から帰省する人も多い」と目を細める。

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 「頭に飾りをつけるのでこの名がつけられた」(旧神郷町発刊「神郷の文化財」)という頭打ちは、明治期に備後地方から伝わったとされ、広島との県境に近い哲西、神郷、哲多地域の市南西部で続く。近隣の高梁市備中町平川や井原市芳井町三原、広島県神石高原町などでも渡り拍子として奉納される。

 元県立博物館長の田村啓介・高梁市教委参与は「備中西部と備後で広まっており、かつての人々の交流ぶりがうかがえる」と説明する。

 太鼓のたたき方、衣装などが神社ごとに異なるのが頭打ちの特色で、中でも象徴的なのは「おごり」という頭飾り。國司神社(新見市神郷下神代)は白い毛で、衣装も神楽の猿田彦をイメージした白が基調となっている。10月の「おかやま民俗芸能フェスティバル」に出演した中山八幡神社(哲多町矢戸)は、色とりどりの造花で飾っている。

 艮(うしとら)神社(哲西町大竹)は市内で唯一、長いオナガドリの尾羽根を使う。今年も10月に最長1メートルもある勇壮なおごりで16人が奉納した。「必要な尾は約900本で1羽から取れる尾は、1年に10~15本」(旧哲西町発刊「哲西の文化財」)という希少品だ。

 十数年前までおごりをつくっていた矢田谷登さん(86)=同所=は、県内唯一の製作者で県選定保存技術保持者だった故藤原盈雄さんにオナガドリの飼育法やつくり方を習った。「10羽ほど飼い、一つつくるのに4、5年かかった」。現存するのは2人が製作した16個だけだが「まだまだ十分に持つ」と胸を張る。

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 地域ごとの色を大切にした頭打ちも、少子化が存続に影を落としている。

 新見市内ではここ数年、踊り手不足により3神社ほどで奉納されなくなった。かつて小学高学年の男子が跳び子を担った獅子山八幡宮でも、低学年や中学生、さらに女子が加わり、今年は地区外にも門戸を広げた。

 「太鼓4張りの跳び子16人が基本。昔は希望者が多く、くじで選んだりしたが、今は子どもたちにお願いしている」と花田さん。同八幡宮の難波宗隆宮司(70)は「将来にわたって存続させていくには、各神社が連携して違いを研究しながら面白さを伝えることが必要ではないか」と話す。

 花田さんらは今年5月に保存会を設立し、活動態勢を整えて盛り上げを図る。「子どもたちに翌年以降も楽しく踊ってもらい、地域の伝統を残していきたい」と力を込める。

【推薦者】

獅子山八幡宮楽打ち保存会会長 松尾久人さん(60)=新見市哲西町

 小学3、4年生の時に参加したのが最初。今では鉦の音を聞くと、体が反応してしまう。うちの頭打ちが一番良いと思っている。素晴らしさを伝えたくて、秋祭り前に子どもへの指導を35年続けている。大人と子どもが交流する良い機会でもある。保存会が立ち上がり、年間の活動や周囲の協力態勢ができ、若い指導者もいるので心強い。

【メモ】

 頭打ちは秋祭りを彩る中心行事。新見市教委によると、市内で奉納する14神社は、哲西地域7、哲多地域6、神郷地域1。旧市内の新見や大佐地域では見られないという。今年は10月7日に獅子山八幡宮を皮切りに始まり、今月11日の中山八幡神社と綿津見神社(哲多町大野)、15日の豊岡八幡神社(哲多町宮河内)、19日の諏訪山八幡神社(哲多町成松)まで続く。



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