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親子に見るブラックな絆(上)

親子であるがために切るに切れず、問題を引き起こすこともある「ブラックな絆」。多くの場合、親は自分が間違っていることに気づいていません

 先月、岡山市立第一藤田小学校のPTA研修会でお話しする機会をいただきました。温厚な校長先生に、観察力の鋭い教頭先生、そして元気で明るいPTA会長さんたちの温かいサポートと、参加してくださったお母さん方の積極的な参加のおかげで、何とか無事務めることができました。テーマは、原子価論の立場からみた「親子の絆」にしましたが、実は昨年も呼んでいただいたので今年は、絆のブラックな側面に注目してみました。今回のコラムでは、研修内容に一部加筆してご紹介します。

 「親と子どもの絆」というと、どんなことをイメージするでしょうか。親の大きな手と、子どもの小さな手が重なって、愛情にあふれほほえましい絵を想像する人が多いかもしれません。しかし、絆にはそうした社会的な望ましい側面もありますが、親子であるために切るに切れず、つながっているからこそ問題を引き起こす場合もあります。後者を「ブラックな絆」と私は呼んでいます。この絆がなぜ生まれるのかを原子価論のタイプ、マイナス原子価からひもといていくことにしましょう。

 人とのつながりに「不信感と敵意」しか抱かないマイナス闘争原子価を持つ人が親になった場合には、優しさや思いやりを重視しないので、自分の子どもに対しても同様の感情を示します。また自己中心的で、自分自身の評価が高く、周りを見下す特徴のために、子どもを道具のように扱い、子はなんでも親の言いなりになるものとして言葉や態度に表現されます。例えば、子どもというものは何も知らない存在なので厳しく教え叱ることこそが、子どもの成長にとって最善の方法だと捉え、そのため子どもにルールを押し付け、それが守らなければ、暴力を用いることもいといません。

 こうした親が子どもとの関係の中で引き起こす問題が、「虐待」だといえるでしょう。今年、東京・目黒の5歳の女の子が虐待死したケースでは、父親がこう語ったと報道されています。「○○ちゃんが妻とおばあちゃんに甘やかされて何もできない子になっているから、きちんとしつけたい。特に礼儀作法、挨拶、お礼。○○ちゃんが嘘をつくので、それで怒ってたたくことがあった」

 子どもへの虐待によって逮捕された親が、「しつけのつもりだった…」と主張していることをよく耳にします。一般的に考えると、なぜそれがしつけなのかと首をかしげますが、このマイナス闘争原子価を持つ人にとっては、しつけとは、相手の年齢や状況を考慮せずに、ただひたすらに厳しくすることが唯一の方法だと信じていることなのです。

 読者の皆さまはもうお気づきでしょうが、同様のことが教員と学生の間で行われると「体罰」や「アカデミックハラスメント」に、会社の上司と部下の間であれば「パワーハラスメント」と呼び名が変わります。

 もちろん、このマイナス闘争原子価を持っている人は、自分のやり方が正しいと考えているので、多くの場合、間違っているとは気づいていません。そのため、相手を変えて繰り返してしまうのです。

 こうした人に、どう対処したらいいのでしょうかという質問をよくいただきます。そんなときには「ご本人が自分に問題があって、変えていきたいという気持ちがあるなら、カウンセリングを受けることができます。しかし、そうでないなら、基本的には対応は難しい…」としか今のところお答えできないでいます。

 ◇

 小畑千晴(おばた・ちはる)徳島文理大学心理学科准教授。臨床心理士。武庫川女子大学大学院修了後、岡山大学男女共同参画室助教。ドメスティックバイオレンス、摂食障害、女性の両立問題などをテーマに研究を行う。勤務先が徳島のため、岡山市在住の家族とは週末生活を送る。1973年岐阜県生まれ。

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