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サウジ記者死亡 言論への弾圧は許されぬ

 政府に批判的な自国のジャーナリストを殺害し、口封じしたのであれば、言論に対する絶対に許されない弾圧である。真相究明を徹底して求めるべきだ。

 米国を拠点にサウジアラビア政府を批判していたジャマル・カショギ記者がトルコで行方不明になった事件で、関与を否定してきたサウジ当局が、イスタンブールのサウジ総領事館内で同氏が死亡したと発表した。

 事件に関わったとしてサウジ人18人を拘束し、情報機関高官らを解任したという。死亡は「口論と格闘」の結果の偶発的なものだとし、関係者が事件の隠蔽(いんぺい)を図ったと強調している。

 だが、これは到底信用できない。サウジ側は当初、カショギ氏は総領事館を訪問後、立ち去ったと主張していた。これに対し、トルコ当局が総領事館などを捜査し、殺害時の音声記録を入手したとも伝えられている。国際社会からの圧力が強まったことで、関係者の処分で幕引きするつもりなのだろう。

 多くの国が、事件の背後にはサウジ国内で絶大な権力を握るムハンマド皇太子がいるとみている。しかし発表は皇太子の関与に言及せず、批判を避ける意図が明白だ。情報機関も支配下に置く皇太子が関知しなかったというのはいかにも不自然である。

 ムハンマド皇太子はサルマン国王の下で政治、経済、軍事を掌握し、脱石油依存を目指す大胆な改革が注目されている。禁じられていた女性の自動車運転を解禁するなどして評価される一方で、政敵でもある王子らを汚職の疑いで次々と拘束し、異論を排除してきた。国内外に徹底した監視網を敷き、批判勢力の摘発を指示しているとされる。

 カショギ氏は、サウジやアラブ世界で著名なジャーナリストの一人とされ、ムハンマド皇太子の政策などを批判する記事を執筆していた。失踪後に米紙に掲載された最後のコラムの題は「アラブ世界が最も必要としているのは表現の自由」だった。

 英国とフランス、ドイツの外相は非難声明で、ジャーナリストへの脅迫や攻撃、殺害は容認できないと表明した。各国の閣僚や外国企業の間では、サウジで開かれる国際会合への参加見送りが相次いでいる。このまま真相にふたをすれば、サウジの改革の失速や、中東情勢の不安定化にもつながりかねまい。

 事件発覚後は武器取引やイラン抑止のためにサウジへ肩入れする発言が目立ったトランプ米大統領も、サウジ側の説明に懐疑的な見方を示している。

 言論への暴力では、地中海の島国マルタの女性記者が昨年殺害され、ミャンマーで少数民族ロヒンギャへの弾圧を取材した記者が国家機密法違反の罪で有罪になるなどしている。「知る権利」を守るためにも国際社会は毅然(きぜん)とした対応を取るべきだ。

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