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備中の旨酒、大阪で好評を博す イベントで個性や魅力発信

(左から)菊池酒造、芳烈酒造、白菊酒造、十八盛酒造

台風の影響はほとんどなく、2日間にわたり多くの人が来場した

来場者対象のセミナーでは、地酒の試飲も楽しんでもらった

 「備中のお酒って、どれもおいしい!」「岡山にはこんなに多くの酒蔵があるんだ」

 去る10月5日(金)と6日(土)の両日、大阪市内で催された「和酒BAR in おおさか」(岡山県備中県民局主催、岡山県大阪事務所共催)。備中地域の4蔵元が集うイベントに来場した飲み手からは、そんな好意的な声が多く聞かれた。会場では4蔵元が持参した32点もの酒がチケット制で試飲できるだけでなく、蔵元との交流も楽しめる。その上、日本酒セミナーやインタビュー形式の蔵元紹介を通して地域の風土や造り手の素顔、こだわりにも迫れるとあって、来場者は備中の地酒により親しみを感じることができたようだ。

 片手に備中の酒、傍らには来場者が持参したおつまみの数々。それぞれのスタイルで角打ち(酒屋で買った酒を一角で飲むこと)を楽しむ人たちの様子を目の当たりにして、きき酒師としてイベントに関わった私も思わず笑顔になった。半面、備中の地酒の旨(うま)さ、魅力を一人でも多くの人に伝えるには、さらなる努力が必要であることをあらためて思い知る。大阪での本イベントは、昨年に続いてまだ2回目。継続することで、備中の地酒をより広く知らしめたい。

 「備中の酒」とひとくくりにいうが、その個性は実にさまざま。甘口で旨みのあるタイプからキレのよい辛口のものまで、バラエティに富む。共通点は、岡山県産の米と高梁川の伏流水が酒造りに使われていること。「雄町」や「山田錦」といった酒造好適米や飯米「朝日」の個性を引き出し、地域によってミネラルバランスが異なる水を生かすからこそあらわれる味わいの違いは、古くから備中を拠点に発展を遂げてきた「備中杜氏(とうじ)」の技によるところが大きい。香りや味わいに派手さはなくても、あらゆる料理を受け入れ、飲み飽きしない魅力が、備中の地酒にはある。各蔵が表現する「食中酒(しょくちゅうしゅ)」の世界は、こうしたイベントの場で飲み比べることで広がると信じている。

 試飲を重ねて好みの一杯を探す人たちの表情は楽しそうであり、真剣でもあり。個人的には、ひと夏越して円熟味を増した「ひやおろし」や「秋あがり」と言われるこの時季ならではの酒をもっと前面に押し出してもよいのではないかと感じた。大阪には燗(かん)酒が気軽に楽しめる居酒屋やイベントが多いことから、温度帯の違いで楽しませるひと工夫も欲しいところ。開催地の飲み手の嗜好(しこう)を満たすアプローチも、戦略のひとつに加えたい。備中の風土や酒造りのリアルな現場を写真や映像で伝えることができれば、臨場感がもより増すだろう。ビジュアルなどのツールを駆使して伝える手法は、個人的にもぜひ取り入れたいと思う。

 県外の酒蔵に目を向けると、大きな酒の会が関西でも続々と催されていて、軒並み好評を博している。その多くは酒造組合などの組織がバックアップしているようで、うらやましくも映る。しかし、一方で蔵やイベントの規模が小さいからこそできるアピールもあるはずだ。各酒蔵による日ごろからの情報発信もしかり、イベントとは別に酒販店対象の説明会を催して認知度アップを図ることもしかり。蔵元にはイベントの内容を主催者に委ねるばかりでなく、数少ない機会を大いに生かす積極性がもっとあってもいいと思う。来年、再来年と回数を重ねるにつれて、備中の地酒を身近に感じてもらえるように。私もまた、後方支援に力を注いでいくつもりだ。

 ◇

 市田真紀(いちだ・まき) 広島市出身の日本酒ライター。最近の主な活動は、日本酒業界誌『酒蔵萬流』の取材執筆や山陽新聞カルチャープラザ「知る、嗜む 日本酒の魅力」講師など。このほか講演やイベントの企画・運営を通して、日本酒や酒米「雄町」の認知拡大を図っている。夏は田んぼ、冬季は蔵が取材フィールド。たまに酒造り(体験・手伝い)。SSI認定きき酒師、同日本酒学講師。J.S.A SAKE DIPLOMA取得。1970年生まれ。

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