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瀬戸大橋30周年 初心に帰れ 「愛される理由」テーマにイベント

左から、狂言師の野村万蔵さん、歴史学者の磯田道史さん、そして私の3ショット=国立能楽堂

 今から30年前の1988年4月10日、瀬戸大橋は開通しました。その前日、宇野港を出る最後の連絡船の実況を行うため、先輩アナウンサーが持っていたマイクのケーブルをさばいたのが、私の社会人としての初仕事です。最後の連絡船を見送ろうと、桟橋には人があふれ、人混みにもみくちゃにされながら、それでもマイクケーブルを必死で握っていたことを、私は今でもはっきりと覚えています。

 歴史的な瞬間をリポートできる人間になりたい、その時にそう思いました。翌日の4月10日は、大臣たちがテープカットする前に瀬戸大橋の中央に場所を取り、初めて瀬戸大橋を渡る人たちの撮影補助にあたりました。マスコミってすごいな〜と思いました。大臣より先に瀬戸大橋を渡っていたのですから。

 あれから30年です。常々私は「瀬戸大橋とは同期君です」と言っています。その瀬戸大橋開通30周年は私にとっても社会人30周年なんです。そこで、その記念に何かイベントをしたいと考えました。それが9月16日・17日に、岡山市民会館で開催される「狂言in岡山」です。

 狂言師の野村万蔵さん、女優の松坂慶子さん、歴史学者の磯田道史さんをお迎えしてトークショーと狂言を岡山で見てもらうというイベントです。イベントの趣旨は、私の中で、同期の瀬戸大橋がこれからも長く愛されて、私たちにとってなくてはならないものになるためには何が必要か、でした。

 狂言師の野村万蔵さんとは番組などを通してお世話になっていました。考えてみると、狂言というのは歌舞伎などよりももっと歴史があり、そのルーツは600年以上前にあると言われています。では、600年以上も世の中に必要とされ、愛されてきた理由はなんなのか。そのことが少しでも分かれば、瀬戸大橋が次の30年間愛されるために何が必要か、分かるかもしれない。そんなふうに考えて、野村さんにイベントの依頼をしたのです。

 狂言とは違うかもしれませんが、テレビの世界で生きて来た私にとっても「愛される理由」は大切なテーマだったのです。日々、視聴率に一喜一憂しているテレビ界ですが、その視聴率や、人気番組を支える人たちは何を一番大切にしているのか。チャンネルを選ぶ基準はどこにあるのか。「愛される理由」はどこにあるのかは、テレビ界に身を置くものとしてとても大切なテーマなのです。

 野村万蔵さんは以前、一度は逃げ出したくなったと話してくれたことがあります。たまたまアナウンサーになった私とは、責任や歴史が違います。その時に、お父様や、お爺様、そのまた昔の野村家の皆さんのことを考え、今ここで逃げ出してはいけないと思ったそうです。実は私も、局アナ時代に、何度も逃げ出そうと思ったことがありました。

 私が逃げ出したいと思っても、そうしなかったのは、やはり、連絡船のリポートをする先輩アナのケーブルを握りしめていたからなんです。歴史的な瞬間を絶対自分でもやるんだ。それまでは、石にかじりついても逃げないぞ。と。初心に帰ったのです。逃げ出したい、会社を辞めたいと思った時には、いつも、入社当時に描いていた夢は果たせたのか。初心に帰り、入社当時の自分に語りかけたのです。

 石にかじりついても、会社をやめるな、とは言っていません。会社は辞めたい時に、やめればいいと思いますが、せっかく夢を抱いてその世界に入ったのであれば、初心に帰って、当時の自分に問いかけてみるのも、一つの策と思うのです。

 イベントは「愛される理由」がテーマです。松坂慶子さんは、私が物心ついた頃からの憧れのスターです。これほどにまで長く愛されている女優はざらにはいません。そこにはどんな理由があるとお考えなのか、聞くのが楽しみです。歴史学者の磯田道史さんは岡山市出身です。狂言や日本の様々な歴史から、「愛される理由」について語ってくれると思っています。

 ちょうど、NHKの大河ドラマ「西郷どん」の新たな出演者が発表されました。なんと、野村万蔵さんは、尊王攘夷派の公家として活躍した、三条実美役で、17日の狂言の舞台に立ってくれる万蔵さんの息子さんの野村万之丞さんは明治天皇役で出演されます。

 松坂慶子さんは、西郷隆盛の母親役でした。磯田さんは時代考証で関わっています。イベントでは、どんなお話が飛び出すのか楽しみです。西郷隆盛はどうしてドラマの主人公になるほど今でも人気なのか。坂本龍馬との関わりは、実際どうだったのか。またまた、「西郷どん」の配役で、松坂慶子さんと風間杜夫さんは夫婦で、隣に住む大久保次右衛門の役を平田満さんが。これはどう考えても、映画「蒲田行進曲」の銀ちゃん、小夏、やす、の配役なのです。
 
 書き出すと、質問したいことが山ほど出てきます。このような素晴らしいみなさんをお迎えしてイベントが開けるのも、それもこれも、常に初心に帰り、自分に語りかけてきたおかげと考えています。初心に帰り、当時の自分に語りかける。みなさんも人生に迷ったら一度じっくり入社当時の自分と話してみてください。

 ちなみに、「狂言in岡山」のチケットは、山陽新聞の「さん太クラブ」会員の方は、かなりお得に手に入れることができます。会場でお待ちしています。

「狂言in岡山」
日時:9月16日(日) トークショー 午後6時半開演、9月17日(月・祝) 狂言 午後1時開演
会場:岡山市民会館 大ホール(岡山市北区丸の内2-1-1)
料金:トークショー【前売】S席4500円、A席3000円 【当日】S席5000円、A席3500円
   狂言【前売】S席6000円、A席4500円 【当日】S席6500円、A席5000円
   未就学児は入場不可。問い合わせ先は、JTB岡山支店(086-232-3441)

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多賀 公人(たが・きみと) コミュニケーションコンサルタント。瀬戸内海放送でアナウンサー兼プロデューサーとして28年務めた後、ユイ・コミュニケーション・ラボ(株)を設立。企業・団体を対象に映像を使ったコミュニケーション研修トレーナーや、商品PR・ブランド広報戦略のコンサルタントとして活躍中。現在も瀬戸内海放送や山陽放送でキャスター兼コメンテーターとしてレギュラー多数。プロゴルファー石川遼選手の「ハニカミ王子」の名付け親でもある。1963年玉野市生まれ。

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