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氾濫のメカニズム(下)治水 小田川 改修間に合わず

上から流れてくる高梁川と左からの小田川の合流点。今回の豪雨で背水現象が起きていたとみられる=7月8日、アジア航測提供

 「河川改修をしていればこれほど被害が大きくならなかったと予測される」

 今月4日、広島市であった土木学会(東京)の西日本豪雨調査団による報告会。倉敷市真備町地区を調査した岡山大大学院の前野詩朗教授(河川工学)は、同地区内で堤防2カ所が決壊し、甚大な浸水被害をもたらした高梁川の支流・小田川について、今秋、着工予定だった国の河川改修が行われていた場合のシミュレーション結果を示し、強調した。

 前野教授は西日本豪雨時の小田川の流量などを踏まえて改修の効果を推定。下流部で約1・5メートル、上流部で約0・9メートルそれぞれ水位が低下する結果となり、今回の氾濫要因の一つとされ、高梁川に流れにくくなって水位が上昇する「バックウオーター(背水)現象」の影響を軽減できた可能性を示唆した。

長年の懸案

 河川改修は、水害に悩まされてきた真備町地区を守る治水対策として国が2010年に計画を策定した。

 計画は、勾配が緩やかな小田川と急勾配の高梁川の合流点で背水現象が起きる特性などから将来的にも「浸水被害が生じる恐れがある」と指摘。洪水時の流れをスムーズにして水位を下げるため、合流点の南側にある柳井原貯水池(倉敷市船穂町)を小田川のバイパス(長さ約3・4キロ)とし、合流点を下流へ約4・6キロ移す改修工事を盛り込んだ。

 事業費は約280億円。14年度から設計や地元説明会を実施しており、今秋に着工する見通しで、10年後の完成を目指していた。

 地元にとって河川改修は長年の懸案だった。国は1968年、治水と利水を兼ね、柳井原貯水池を小田川のバイパスとした上で同貯水池内に柳井原堰(ぜき)を建設する計画を公表。しかし「堰を造れば基礎部分にコンクリートが打ち込まれ、地下水が枯れる恐れがある」などと反対の声も上がり、事業は二転三転して2002年に中止となった。

 10年に治水に特化する形で具体化されたものの、結果として間に合わなかった改修工事。国土交通省岡山河川事務所は「国として粛々と事業を進めてきた」とする。

 平成の大合併で倉敷市に編入された真備町の町議だった黒瀬正典さん(65)=同町岡田=は「地元住民にとって治水対策は悲願。毎年、町長らと国などに要望していた。国も危険性を認識していただけに、何とかならなかったのか…」と悔やむ。

前倒し方針

 西日本豪雨の発生から1週間ほどたった7月15日。「河川管理をきっちりしていれば、ここまで大きな災害にならなかったはず」。51人が犠牲となった真備町地区の避難所となっている薗小学校を視察した石井啓一国交相に、被災した男性は訴えた。

 視察後、石井国交相は記者団に「(河川改修が)なるべく早くできるように計画を見直す」と述べ、工事の完了時期を当初予定の28年度から前倒しする方針を明らかにした。

 岡山河川事務所によると、今回の豪雨で小田川の流れを阻害したとされる中州の樹木の伐採も、18年度中の完了を目指して急ピッチで作業を進めている。

 土木学会長で調査団長の小林潔司京都大教授は「氾濫のリスクが高く、もっと早く手を打っておくべき場所だろう。治水対策は日常的に効果が見えないため後回しにされがちだが、危険度が高い場所を洗い出して整備を急ぐべきだ」と指摘する。
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