文字
  • ホーム
  • 氾濫のメカニズム(上)記録的雨量 停滞前線に水蒸気流入

氾濫のメカニズム(上)記録的雨量 停滞前線に水蒸気流入

記録的な豪雨で河川堤防の決壊が相次ぎ、エリアの3割が水没した倉敷市真備町地区=7月9日午前10時19分

 100年に1回程度の非常にまれな大雨だった―。

 倉敷市真備町地区の3割を水没させた西日本豪雨。同市周辺で24時間の最大雨量が約200ミリに達した状況を防災科学技術研究所(茨城県)はそう分析する。

 岡山県内で豪雨の影響が出始めたのは7月5日。夜までに真庭市と美咲町の計6棟が床下浸水し、県中北部を中心に12市町で避難勧告などが出された。雨は6日午後からピークになり、7日午後まで続いた。

 6日夜、県のほぼ全域に大雨特別警報が発令された。「数十年に1度」という基準で出される同警報は2013年8月の運用開始以来、県内では初めて。夜が明けると各地で被害の実態が明らかになっていった。

 県内10河川の18カ所で堤防が決壊し、浸水被害や土砂崩れが続発した。現時点で全半壊家屋は7450棟と風水害では戦後最悪となった。床上・床下浸水は8944棟に上る。死者は61人で戦後2番目の規模。今も3人の安否が不明だ。

特異ケース

 未曽有の豪雨はどのようにして起きたのか。

 「さまざまな要因が複合した非常に特異なケース」と岡山地方気象台の楠田和博観測予報管理官は指摘する。同気象台などによると、要因の一つは梅雨前線の長期停滞だ。日本列島南側の太平洋高気圧と、北側のオホーツク海高気圧に挟まれた梅雨前線が行き場を失い、本州付近にとどまり続けた。

 そこに南から多量の水蒸気を含んだ空気が流入。東シナ海付近からの湿気と、太平洋高気圧の縁に沿って流れ込んできた湿気がちょうど西日本付近で合流するなどし、前線を刺激したとみられている。

 特異な現象が降らせた雨は“異常”な量となった。気象庁のデータによると、7月7日午前までの48時間雨量は新見市新見420・0ミリ▽鏡野町恩原409・0ミリ▽真庭市久世400・5ミリ―など、県内25観測地点のうち20地点で観測史上最大を更新。2日間で、7月の1カ月間平年値の2倍前後を記録した。

 「広範囲で長時間、激しく降り続いたことを示しており、これが河川の増水、堤防決壊につながった可能性がある」と楠田管理官は説明する。

初の緊急放流

 前例のない大雨だったことは、高梁川水系の河本ダム(新見市)の動きからも見て取れる。県河川課によると、同ダム流域では48時間の平均雨量が計画(最大221ミリ)の1・8倍に相当する400ミリを観測。6日午後11時から約1時間半、1964年のダム完成以来初めて水位を下げる緊急放流に踏み切った。同課は「緊急放流は管理ルールに基づいた措置。今後、放流の影響などについて検証していく」としている。

 国内では近年、豪雨や台風による災害が頻発している。福岡、大分県で大規模な土砂災害が発生した九州北部豪雨(2017年)、茨城県・鬼怒川が決壊した関東・東北豪雨(15年)、77人が犠牲になった広島土砂災害(14年)…。西日本豪雨の後も関東や東北地方などで記録的な豪雨があり、台風も量産状態になっている。

 こうした状況を踏まえ、岡山大大学院の加藤内蔵進教授(気象学)は警鐘を鳴らす。

 「温暖化が進めば、南海上からの水蒸気の流入の仕方の多様性も増し、これまでとは異なる流入パターンでの豪雨の可能性も高まり得る。住民や自治体は『想定外』も念頭にした十分な備えを心掛けるべきだ」

     ◇

 倉敷市真備町地区をはじめ、岡山県内各地に大きな被害をもたらした西日本豪雨。異常な雨量や河川決壊に至った要因、防災の課題点などを検証する。
カテゴリ:

【氾濫のメカニズム】の最新記事

ページトップへ

ページトップへ

facebook twitter rss

▼山陽新聞社運営サイト
さんデジタウンナビ | 岡山の医療健康ガイド | マイベストプロ岡山 | 47CLUB | さん太クラブ | おかやまリフォームWEB | LaLa Okayama
山陽新聞カルチャープラザ | 建てる倶楽部 | 山陽新聞進学ガイド | 山陽新聞プレミアム倶楽部 | まいられぇ岡山 | 囲碁サロン
▼関連サイト
47NEWS | 今日のニッポン
掲載の記事・写真及び、図版などの無断転記を禁じます。すべての著作権は山陽新聞社、共同通信社、寄稿者に帰属します。

Copyright © The Sanyo Shimbun. All Rights Reserved.