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氾濫のメカニズム(中)決壊 小田川と3支流で越水

小田川と高馬川の合流部の決壊箇所を確認する国の調査委員会メンバー。写真奥は樹木が茂る小田川の中州=7月8日、倉敷市真備町箭田

 茶色く濁った水に見渡す限り覆われている。水面上にのぞくのは、民家の屋根と2階部分だけ。近くの河川の堤防は、複数の箇所で消えうせている。

 「これは想像以上だな」

 西日本豪雨で、小田川と3支流の計8カ所が決壊し、面積の3割に当たる約1200ヘクタールが水没した倉敷市真備町地区。東西に流れる小田川と北から注ぐ支流・高馬川との合流部は3カ所の決壊が集中しており、水没翌日の7月8日に現地入りした国の調査委員会メンバーは、辺りの異様な光景に息をのんだ。

 調査委はこの日、決壊原因を探るための現地調査をスタート。その時点でメンバーたちの念頭には、小田川の構造などを踏まえたある推測があった。「鬼怒川と同じく『越水』が原因ではないか」

 2015年9月の関東・東北豪雨では鬼怒川が決壊し茨城県常総市の約4千ヘクタールが水没した。小田川は鬼怒川と同様に増水時も流れが緩やかで、堤防の決壊原因が、一般的にみられる激流の圧力による浸食とは考えにくい。調査委は以後も実地調査や会合を重ね、増水時の映像や水の流れの痕跡などから、推測通りとの見方を強めていく。

 堤防を越えてあふれた水が、落下の勢いで住宅地側ののり面を削り取り破堤した―。鬼怒川の決壊メカニズムが小田川やその支流で再び起きたとの見解が示されたのは、水害から約1カ月後の今月10日だった。

堤防高足りず 

 越水はなぜ起きたのか。

 専門家の多くは、想定以上の降雨だけでなく、本流の水位が上がって支流の水が流れ込みにくくなる「バックウオーター(背水)現象」の影響を指摘する。利根川の支流である鬼怒川でも越水を引き起こした一因とされた現象だ。

 勢いよく流れる高梁川と、その支流で勾配が緩やかな小田川との合流部はもともと、背水現象が起きやすいとされる。調査委委員長の前野詩朗・岡山大大学院教授はこの合流部だけでなく「小田川とその3支流の合流部付近でも背水現象が起き、全体の水位上昇を招いた」と分析する。

 また、調査委は決壊箇所の測量データなどの分析で、周囲より低い堤防の部分で越水が起きていたことを確認した。小田川上流の決壊箇所(倉敷市真備町尾崎)では堤防の標高が16・9メートルで、想定される最高水位を踏まえて国が設定する整備目標(17・2メートル)に0・3メートル不足していたことが判明している。

中州樹林化 

 「小田川の中州で生い茂った樹木が流れを悪くしたのでは」。越水の原因を巡り、地元住民の間ではこうした見方も根強い。

 国土交通省岡山河川事務所は「決壊要因とは考えていない」との立場だが、国が17年に改定した河川整備計画は中州の樹林化が小田川の流下能力低下を招いていると記している。川の樹林面積は14年時点で40ヘクタールを超え、その10年前の約2倍、20年前の約7倍に拡大。地元は再三にわたり早期伐採を求めていた。国は15年から3年間で15ヘクタールを伐採したが、豪雨災害の発生時、堤防が決壊した2カ所の周辺の中州は樹木が森のように密集していた。

 今月7日、現地を視察した今本博健・京都大名誉教授(河川工学)は、中州の樹木について「伐採にまで手が回らないのは国内の河川に共通する課題とはいえ、小田川は樹林化が特に顕著。伐採していれば水位が1メートル近く下がった可能性もある」と指摘。「周辺の宅地開発が進み、氾濫時のリスクが高まっていた中で行政の対応は適切だったのか」と疑問を投げ掛ける。
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