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くだらなさMAX、15分邦画 500円で異例の単独公開 『クライングフリー〜』

 映画『クライングフリーセックス』の一場面

▼作品タイトルだけで「はしたない」と敬遠されてはもったいないので、先に申し上げておきますと、今回紹介する映画は、女性をもゲラッゲラと笑わせ、ウケている一品であります。しかも、わずか15分の短編ながら、東京・新宿のK’sシネマで9月8日(土)〜14日(金)に異例の単独公開が決定。毎日12:20〜と18:00〜、つまりはもしも近隣にお勤めなら、昼休みに見に行っても、13:00には帰社できてしまう時間設定のもと、料金は500円均一。ありがとう。既に、ゆうばり国際、ブリュッセル国際、プチョン国際など、各ファンタスティック映画祭を笑わせ済みだ。

▼それが、岩崎友彦監督・脚本の『クライングフリーセックス CRYING FREE SEX』。チケット窓口でもうちょい照れずに言えるタイトルにしてほしかった気がしないでもない。綾瀬はるか主演『おっぱいバレー』(2009年)が、「窓口では『OPV』でも可」と周知していたことにオマージュを捧げ、以下、『クライング―』の表記は『CFS』で参ります。

▼ある秘密組織に潜入中のコブラ(総合格闘家マイケル・ファンコーニ)とナオミ(合アレン)。ミッション遂行を目前にした朝、ナオミが高ぶり、コブラとまじわる。2人で盛り上がったはいいが、終わってもぬけない! マズいことに武装した敵の人間たちが迫ってくる。つながったまま戦うことを余儀なくされた2人。果たして絶体絶命の危機を切り抜けられるのか…。

ぬけなくなったのは、空想科学レベルのとあることが原因で、唖然呆然笑止。戦う2人の顔つきは鋭く、体勢は極めてお恥ずかしい。

▼「なんてくだらないんだ!と多幸感でいっぱいになった。こんなにもくだらないバカ映画(褒めている!)を中二ではなく、50を過ぎたおっさんが真顔で撮っている事を想像するだけで暖かい涙が止まらない。岩崎さん!最高かよ!」(原文ママ)

これはこの夏、上映2館から120館超へと躍進し、ジャパンにもドリームがあるのねと証明中の低予算映画『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督が、CFSに寄せた素敵なコメントだ。

▼岩崎監督(1966年生まれ)は言う。「男女がつながったまま戦うという状況を描いた作品は、恐らく映画史上初ではないでしょうか。バディ物の新しいジャンルになりうると自負しています。非常にバカバカしいシチュエーションを至って真面目に、ハリウッド的な話法で映像に成立させています。たった15分の映画ですが、129分の長編に引けを取らない濃密さを目指しました」

 惹句には「新合体物の歴史的生誕を君は目にする」とある。泣けてくる。

▼2人がつながれたまま逃げる、戦う映画は幾つもある。だが、たいてい手錠だ。『手錠のまゝの脱獄』(1958年)は白人と黒人の囚人2人がいがみ合いながらも逃亡を続けた。『プロジェクトA2 史上最大の標的』(87年)は、ジャッキー・チェンが悪徳警官と手錠でつながれたまま海賊との格闘アクションをやってのけた。ジョン・ウー監督『マンハント』(2017年)では福山雅治とチャン・ハンユーが手錠でつながれたまま拳銃や日本刀で敵と戦った。ちなみにマンハントは酒場でみんなでツッコミを入れながら見れたら最高。

▼CFSに一番近いのは『007 トゥモロー・ネバ・ダイ』(1997年)かもしれない。ジェームズ・ボンド役ピアース・ブロスナンとミシェル・ヨーが、手錠でつながれたままバイクに2人乗りで逃走するのだが、後ろに座ったミシェルが途中、追っ手を確認すべく、運転するボンドの前に移動して対面でまたがる。一瞬ニヤつきかけたボンドを「ヘンな気を起こすんじゃないわよ」といさめると、「夢にも思いましぇん」とボンド。その体勢のままボンドはバイクをとばし、ミシェルは道路脇の物をつかんで、追っ手を攻撃するのだった。

CFSのポスターは、男コブラが右手に銃、左手をナオミの腰に回した立ち姿で、さながら007のようだ、服さえ着ていればの話だが。

▼一足先に鑑賞した女性たちの反応は「大好きです」「免疫力上がったと思います」「9月にみんなでまた見に行こうよ」「ほめ言葉として、本っっ当にくだらない」と上々らしい。

その中心にいたのが「日本は女性の性的抑圧が強く、性的なことを口に出すのも憚られる。そのため意思表示ができず、意に染まない関係を築いてしまうことも多い」と言う、もりこさん。もっと気軽に相談し合える仲間づくりをし、女性が意思表示でき、尊重されることを目指して活動中。オランダの国営放送が活動を取材に来た際、ディスカッション前の題材としてCFSを選び、大いに盛り上がったそうだ。

▼主演女優で配給も担っている合アレンは、どんな思いで臨んだのか、聞いてみた。

「岩崎監督の脚本を読んだ時、ナオミというキャラクターに一目惚れし、笑いの中に岩崎監督の愛らしい世界観もしっかりと入っていてとても好きでした。撮影は、このストーリーのユーモアが分かる皆が集まったわけで、つまり大の大人達が真面目に汗かきながら、時に声を荒げながら(公衆では言えない言葉を、シーンを作るため真剣に叫び合いながら)作りました。セリフ途中で吹き出してしまうことも多々ありました。オタク気質の愉快な大人達の汗と涙の結晶のような作品です」

▼岩崎監督は「長編のパイロット版的な意味合いで作りました」と長編化に意欲満々だ。

「主人公ナオミの青春時代、ファーストミッションを描くことで、より深みのある作品にすることを目指しています。また、コブラとナオミのその後を描くことで、さらなる世界観の広がりを観客に提示できると思います。短編で描かれた部分も、予算的な制約等で表現に限界のあった部分を新規に撮り直し、よりパワーのあるシークエンスにしたいと思っています。レイティング的には物語上、R18でないと成立しないと思います。窮屈な表現となることなく、パワー全開、フルスロットルの映画にしたいと思います」

長編も見たい。だが、製作費は融通できるのか。合アレンが答えてくれた。「今、長編化に向けて私がアメリカで営業しています。(目指す)予算は5000万円ですが、叶うかは未知数です。ここまで来たのも奇跡なので、どうせなら更なる奇跡を起こし、今の時代だからこそ国境を越え世界中を笑いの渦に巻き込みたいなと思っています!」

『HK 変態仮面』をしのぐ渦にならんことを。(敬称略)

(宮崎晃の『瀕死に効くエンタメ』第114回=共同通信記者)

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