文字

高橋大輔さん現役復帰会見詳報 「自分のスケートを取り戻す」

記者会見後、写真撮影に応じる高橋大輔さん

 フィギュアスケート男子で2010年バンクーバー冬季五輪銅メダルの高橋大輔さん(32)=倉敷市出身、翠松高出=が1日、新シーズンに現役復帰することを明らかにした。2014年ソチ冬季五輪を最後に引退した後はプロスケーターとしてアイスショーなどに出演してきたが、約4年ぶりに勝負のリンクに舞い戻る。同日夜に東京都内で行った会見では、決意に満ちた表情で復帰の理由や思いを語った。

――復帰を決断した理由、決断に至った理由は。

 現役に戻りたいと最終的に決断したのは、昨年の全日本選手権の後。僕は現役の時は世界で戦うためにやっていて、「勝てないなら現役をやるべきではない」と思っていた。だけど、全日本選手権でそれぞれの思いを持って滑る選手たちを見て、(結果だけを追求するのではなく)こういう戦い方も良いんじゃないかと思えるようになった。

 あとはソチ五輪が終わって、(直後に東京で行われた)世界選手権にけがで出場することができず、さっぱりとした気持ちで次に向かえていなかったんじゃないかと考えるようになった。ただ、(2014年の)引退後の4年間のうち、前半の2年は現役復帰なんて言葉にも頭に浮かばなかった。やり切れていなかったと気付き始めたのはこの1年くらい。競技生活をやり切って、自分の納得する形で次に進まないといけないんじゃないかと思うようになった。(年齢的にも)良いパフォーマンスができるのはあと5、6年。今後、アイスショーなどで見ている人に失礼のないスケートをしていくためにも、現役復帰して、体を作り上げていく必要があると思った。いろいろ複雑な気持ちがある。

――決断後の心境は。現役中はけがなどつらい経験もあったと思うが。

 復帰を決めてからは現役に戻ることだけを考え、すっきり過ごせていた。平昌冬季五輪や世界選手権で活躍する選手たちの姿は刺激になった。練習は4月から徐々にスタートし、今は非常に充実した時間を過ごしている。(困難が多かった現役生活に戻りたいと思ったのは)自分にはフィギュアスケートというものが軸にないとだめだと思ったから。自分のスケートを取り戻したい思いに突き動かされた。これまでは周りの期待に応えようという中で戦っていたが、今回は自分だけのためにやっていきたい。

――男子は4回転時代にある。今季はルール改正もあったが復帰に影響したか。

 復帰とルール改正のタイミングがたまたま一緒になっただけで、ルール改正が復帰の要因ではない。今までやってきたものとは違うので、フレッシュな気持ちで挑める良いタイミングだとは思う。フリーは(以前の4分半から)4分に短縮されるが、途中で休むところがなくなり、逆に今まで以上にしんどくなる。体力面の強化も必要だと感じている。

――2月の平昌冬季五輪ではどういう気持ちで見ていたか。後輩たちの活躍は復帰に影響を与えたか。

 平昌五輪のときは、いち国民としてただただ応援する気持ちで見ていた。自分が現役に戻るにしても、彼らは別次元のところにいると思っていたので、自分が戦うところとは切り離していた。五輪をもう一度目指そうという気持ちは、今はない。選手たちが思い切りやった後に悔しがったり、喜んだりしている姿はやっぱりいいなと感じ、自分自身でももう一度味わいたいという意味では刺激になった。

――復帰に当たってスケート仲間や、指導を受けていた長光歌子コーチには相談したか?

 報告は(浅田)真央やノブ(織田信成)たちには直前に伝えた。コーチには昨年末の全日本選手権後に「現役をやりたい」と伝え、賛成してもらった。相談というより報告。誰かに相談するというのはなかった。自分の中で決めて、「こうしたい」と話をした。

――今後どういう戦いがしたいか。今季のビジョンは。

 まずは年末の全日本選手権を目指して、(出場資格を得るために)近畿選手権(10月)、西日本選手権(11月)を通過したい。全日本選手権での表彰台は、今の段階では難しいかな。けど、練習していく中でもしかしたら見えてくるかも。その先は全日本選手権が終わった後に考えたい。全日本選手権まであと6カ月で4年間のブランクを埋めないといけない。相当なブランクなので、できることを精いっぱいやりたい。30歳を超えてもこれだけ成長できるという姿を見せたい。

――全日本選手権の先の国際大会などは考えていないのか。

 自分の中では考えていない。世界を目指すというより、自分自身がどこまで戻れるか、成長できるかという戦いになってくる。もし国際大会に出られるチャンスがあったとしても、そこに自分が出るべきなのかという思いもある。今後の日本のことを考えると、若い後輩たちが活躍をしないといけないし、その邪魔をしてはいけないという気持ちもある。そういうことも含めて考えていく。

――4回転ジャンプはどこまで跳ぶことを目標にしているか。

 4回転は・・・2種類、2本くらいは跳べるようになりたい(笑)。練習の中で、もしかしていけるんじゃないかという可能性は見えている。感触としては良い感じで来ている。平昌冬季五輪では(テレビ局の仕事で)トップの選手たちがどう跳んでいるのかを間近で見させてもらって、すごく勉強になった。(選手名を挙げるなら)ネイサン・チェン選手(米国)のジャンプは研究している。

――現役時代は満身創痍(そうい)だった。膝の痛みなど今の状態はどうか。

 右膝の手術の影響は今でも少なからずあるので、ケアはずっとしないといけない。膝を補強するための筋肉をつけようと、新たに筋力トレーニングも始めた。現役のときとは違う体の作り方に取り組んでいるので、全く別の体でやっている感じがある。

――全日本選手権には五輪の金メダリストの羽生結弦、銀メダリストの宇野昌磨もいるが、勝ちたい思いはあるか。

 勝てるものなら勝ちたいが、正直、勝てる気は一切していない。金メダリストや銀メダリストに勝てないだろうという中で、「勝てればもうけもの」くらいの考え(笑)。彼らは世界を引っ張っている選手で、別次元。ただ、練習している中でその自信がついたら、思い切り食らいついていきたい。一緒に戦える位置までいけるか分からないが、全日本選手権の最終グループに入って、一緒に6分間練習や公式練習をしたいなという気持ちはある。どこまでやれるか不安な気持ちもあるが、楽しみな気持ちもすごくある。失うものはないので、チャレンジャーとしてやりたい。

――具体的に今後の予定は。新シーズンに向けてプログラムづくりは。

 (8月にあるアイスショーの)フレンズ・オン・アイスに出演予定なので、復帰後に人前で滑るのはそこが初めて。フリーは既に振り付けを行っているので、新しいプログラムを滑るかもしれない。ショートプログラム(SP)はこれから。振付師はフリーがブノワ・リショー(フランス)で、SPはデービッド・ウィルソン(カナダ)。リショーは(平昌冬季五輪代表の)坂本花織選手のプログラムを見て素敵だなと思っていたので、振り付けをお願いした。デービッドは以前(2011-12シーズンのSP)にプログラムを作ってもらったことがあり、前回も気に入っていたし、また一緒にしたい思いがあった。

――コーチなど、復帰後はどういう態勢で戦うのか。

 コーチは(中学生から師事してきた)長光歌子先生にまたお世話になる。教えてもらうというよりは、基本は一人で戦っていくつもりでやる。以前は栄養士さんとかトレーナーさんとかにサポートしてもらって「チーム大輔」でやっていたけど、今は料理も自分で作って、トレーニングもメニューをもらって自分でこなしてやっている。

――2022年北京冬季五輪が控えているが。

 北京まではさすがに考えていない。35歳になるんですかね。そこまでは無理(笑)。復帰はとりあえず1年限定のつもり。シーズンを過ごしてみて、気持ちが変わるかもしれないけど。練習は週5、6日、(母校の)関大のリンクを拠点にしている。4月に基本練習から始めて、ジャンプを取り戻すのに1カ月くらいかかった。プログラムもできたのでこれから練習量を増やしていく。

――現役時代とのギャップに苦しむこともあるかもしれないが、どう考えるか。

 表現の部分では、年齢関係なく成長できると思っている。見ている人には、「昔の方が良かった」と思われるかもしれないが、「(復帰した)今の高橋大輔の方が好きだな」と思ってもらえたらうれしい。

――自身のゴールは何か。現役復帰に何を求めているのか。

 将来的にはパフォーマーとして生きていきたいというのがゴール。限界を感じるまで最高のパフォーマンスをしたい。現役復帰はそのスタートになる。(2014年の)引退後の4年間はいろんな経験をさせてもらったけど、やっぱり自分は体で表現することが一番向いているのかなと思った。そのためには、自分の体をもう一度つくり上げることが必要。現役の競技者という縛りを自分に設けて、もう一度スケートと向き合うことで、自分のスケートを取り戻せると確信している。勝つためではなく、自分のスケートと向き合うためにやる。
カテゴリ:

【フィギュア岡山】の最新記事

ページトップへ

ページトップへ

facebook twitter rss

▼山陽新聞社運営サイト
さんデジタウンナビ | 岡山の医療健康ガイド | マイベストプロ岡山 | 47CLUB | さん太クラブ | おかやまリフォームWEB | LaLa Okayama
山陽新聞カルチャープラザ | 建てる倶楽部 | 山陽新聞進学ガイド | 山陽新聞プレミアム倶楽部 | まいられぇ岡山 | 囲碁サロン
▼関連サイト
47NEWS | 今日のニッポン
掲載の記事・写真及び、図版などの無断転記を禁じます。すべての著作権は山陽新聞社、共同通信社、寄稿者に帰属します。

Copyright © The Sanyo Shimbun. All Rights Reserved.