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「いちゃりばちょーでー」で行こう! 人の縁を大切にする文化

沖縄に行くと毎回立ち寄るソーキそば店

ソーキそば店に飾ってあるシーサーたち

 先週、仕事の関係で沖縄に行きました。このところ東北、沖縄と週末は少し遠くへの出張が続いています。実は今も北海道の新千歳空港のラウンジでこの原稿を書いています。

 沖縄は大好きな場所です。何が好きなのか。空気感や雰囲気、それに空と海です。行くと心が癒されます。まさに私にとってのパワースポットなのです。沖縄好きですから、毎年沖縄で年を越します。瀬戸内海放送を退社して、私が立ち上げた会社の名前も沖縄の言葉に由来します。

 私の会社は、ユイ・コミュニケーション・ラボ株式会社と言います。この「ユイ」という言葉は、沖縄では人と人を結びつけるとか、絆という意味があります。私の名前が「公人(きみと)」ですから、「きみとぼくと」で人と人をつなぐ人、そんな人、そんな会社になればいいと思い、会社の名前にしました。

 このように沖縄が私をひきつける理由として、空気感や南国独特のムードだけでなく、「ユイ」に言えるように、人に優しい、人の縁を大切にする文化がある。そんなところも私が何度も足を運ぶ理由なんだろうと思います。

 今回の人生のキーワード、「いちゃりばちょーでー」は沖縄の言葉です。直訳すると一度会えば皆兄弟という意味です。普段私たちが使う、「袖振り合うも他生の縁」に似ています。この「袖振り合う…」という表現は仏教由来の考え方、生き方ですね。そして、「いちゃりばちょーでー」は琉球王朝時代にさかのぼります。当時、軍隊を持つと争いの元になると考え、琉球王朝は軍隊を持たない王朝でした。争いを嫌い、助け合うことの大切さが、この「いちゃりばちょーでー」という言葉にぎゅっと凝縮されていたんですね。

 「沖縄にはホームレスはいない」と沖縄の友人は胸を張ります。沖縄に行ったことがある方なら気付いていたかもしれませんが、ホームレスをあまり見かけません。それでも、「見ましたよ」と私がいうと、沖縄の友人は「あの人たちは本土から来たのさ」と言いました。沖縄の人は決してホームレスにならない。それは、家族、親戚、近所の人が絶対に見捨てないからなんだそうです。もし、家族や親戚、近所の人たちの中で、ホームレスにならざるをえない境遇に陥った人がいたら絶対に手を差し伸べるんだそうです。それだけ、家族や地域との絆が強いんですね。

 他にも沖縄の文化や、温かさを象徴する言葉に、「なんくるないさ〜」があります。過ぎたことをくよくよしても仕方がない、元気を出して、といった意味とニュアンスでしょうか。私の大好きな言葉の一つでもあります。以前、女子プロゴルフのトーナメントを見ていて、宮里藍選手が「なんくるないさ〜の精神で頑張りました」と言っていたのを聞いた記憶があります。ゴルフという競技は18ホールを大会の場合は4日間や3日間プレーして競います。前のホールで良いプレーができても、次のホールで良いプレーができるとは限りません。野球でもそうですよね。前の打席でホームランを打った選手が、次の打席では空振りの三振ということはよくあります。毎回ホームランを打つ選手の方が実際は少ないのですから。

 「なんくるないさ〜」は、くよくよしていても仕方がない、気持ちをさらりと入れ替えて、次に備えよう。そんな言葉なんですね。心理学や、経営学の組織論の中に最近注目されている「レジリエンス」という言葉があります。大きな失敗をしても、次にチャレンジするときには失敗した時よりもさらに精神的に強くたくましくなっている様を表します。失敗を次の成功に繋げる力が人間には元から備わっている。一度の失敗で嘆くのではなく、失敗したおかげで次の事象に対してしなやかに対処することができるようになる。そんな意味なのですが、まさに「なんくるないさ〜」の精神に似ているんです。

 沖縄は過去から現代に至るまで、さまざまな犠牲や負担を強いられてきた歴史があります。ただ、たとえそうであっても、現在を悲観しないで、前を向いて明るく、そして家族だけでなく他人にも温かい。「なんくるないさ〜」の精神は私たちが見習うべき大切なことではないでしょうか。

 時はまさに米朝首脳会談の最中です。初めて会う天使より、2度目に会う悪魔の方に、人間という生き物は親近感を持ってしまうそうです。意地を張って直接会うのをためらうのではなく、一度会ってみる、そうすることで何か違う見方や、考え方、これまでとは全く違った対処の仕方も見えてくるかもしれません。

 留学すると、多くの海外の友人ができます。スウェーデン、イタリア、アメリカ、韓国。留学時代から25年経っても連絡を取る友人が住んでいる国です。会ったことがある友人が住む国に何かあると、気になります。天災だったら彼は大丈夫かなとメールしています。国同士にあつれきや歴史上の大きな壁があっても、個人であれば、自由に連絡を取り合い、助け合うこともできます。「いちゃりばちょーでー」、人は一度会えば皆兄弟。国同士となると、そう簡単なことではないことはわかりますが、世界中の人々が「いちゃりばちょーでー」な考えであれば、また違った世界が広がってくるのではないでしょうか。少なくとも私はこういった沖縄の考え方、生き方を大切にしていきたいと思っています。皆さんも「いちゃりばちょーでー」でいきませんか?

 ◇

多賀 公人(たが・きみと) コミュニケーションコンサルタント。瀬戸内海放送でアナウンサー兼プロデューサーとして28年務めた後、ユイ・コミュニケーション・ラボ(株)を設立。企業・団体を対象に映像を使ったコミュニケーション研修トレーナーや、商品PR・ブランド広報戦略のコンサルタントとして活躍中。現在も瀬戸内海放送や山陽放送でキャスター兼コメンテーターとしてレギュラー多数。プロゴルファー石川遼選手の「ハニカミ王子」の名付け親でもある。1963年玉野市生まれ。

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