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足利尊氏筆「日課観音地蔵像」か 井原・平櫛田中旧蔵の紙片3点

観音、地蔵像が連続して描かれた紙片(縦16.7センチ、横26.4センチ)。それぞれ上端に「十三日」「十四日」などの日付が確認できる

 近代彫刻の巨匠で井原市出身の平櫛田中(1872~1979年)が旧蔵していた十一面観音、地蔵菩薩(ぼさつ)像などを多数描いた紙片3点が、室町幕府の初代将軍・足利尊氏(1305~58年)直筆の「日課観音地蔵像」である可能性が高いことが31日までに分かった。所蔵する田中美術館(同市井原町)と、尊氏筆と伝わる同像を所蔵する栃木県立博物館(宇都宮市)との共同調査で判明した。

 田中美術館の前身「田中館」が1969年に開館する際、田中本人から譲り受け、未整理品の一つとして保管していた。紙片3点は縦16~18センチ、横13~26センチ。2点は墨で観音、地蔵像が連続して描かれ、裏面には無数の五輪塔図。もう1点は五輪塔図のみが並び、それぞれ日付が添えられている。2016年に佐々木守俊岡山大教授(仏教美術史)から「尊氏筆では」との指摘を受け、調査を行っていた。

 栃木県立博物館などによると、尊氏は熱心な仏教徒で、合戦の死者を供養するとともに、合戦に明け暮れた自身の救済のために毎日、観音、地蔵像を描くことを日課としていたという。田中美術館所蔵の紙片には花押や署名は無いものの、同博物館が所蔵する2点の日課観音地蔵像と、観音や地蔵の表情、大胆で素早い筆致、紙の質、虫食いの形跡などが酷似。元は同一の巻物だった可能性もある。

 田中の入手経緯は不明だが、田中美術館の田中純一朗学芸員は「武将が描いた仏画にも関心を持ち、収集した田中の創作姿勢が垣間見える貴重な資料。尊氏の描いた観音、地蔵像に田中が感性を刺激されたと想像すると、興味深い」。佐々木教授は「尊氏の人柄を探り、信仰心のあつさを補強する資料として意義は大きい」と話している。

 紙片3点は、田中美術館の春季所蔵品展で展示している。6月17日まで。

 日課観音地蔵像 供養の証しとして観音や地蔵を毎日繰り返し描いたもの。武将ら身分のある者が個人的にひそやかに行ったとみられる。栃木県立博物館によると、尊氏は多くの仏画を残したほか、菩薩の法力をたたえる和歌も詠んでいる。尊氏筆とされる日課観音地蔵像は今回の3点と栃木県立博物館の2点を含め、約10点が確認されている。
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