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働き盛りの肝臓守る「出張教室」 岡山大チーム、早期発見に寄与

出張肝臓病教室の会場でウイルス検査のため採血される受講者=岡山市内

 肝硬変や肝臓がんを引き起こす肝炎から働き盛りの人たちを守りたい―と、岡山大病院(岡山市)の有志チームが献身的な活動を続けている。企業や団体などへの出張肝臓病教室だ。病気の解説から検査まで、きめ細かなメニューを用意。要望があれば、医師、看護師、薬剤師らが岡山県内どこにでも、休日や夜でも出向く。「国内最大級の感染症」とされるウイルス性肝炎の早期発見、治療に寄与しており、厚生労働省も「他地域に参考としてほしい優れた取り組み」としている。

 「肝炎の感染は普段の健康診断だけでは分かりません」。臨床検査技師が肝炎ウイルス検査の重要性を説く。医師は飲み薬で完治できるC型肝炎の最新治療法を解説。理学療法士は脂肪肝を改善する効果的な運動方法を紹介した。

 岡山大病院の「肝疾患サポートチーム」はこの日、企業経営者らの交流グループの依頼で岡山市内のコミュニティー施設に出張した。会場では肝炎ウイルス検査もできるように看護師が準備。参加した18人は約1時間半の講座を聞き、ほぼ全員が採血に応じた。

 充実した内容に、依頼したプラスチック再生加工品製造・リプロ(同市)の岡田巧会長(71)は「肝炎の発見が遅れたばかりに人材を失うのは企業にとって大きな損失。参加した経営者が従業員のため、各自の会社にも出張教室を呼んでもらえれば」と話した。

 多 様 な メ ン バ ー 

 チームは医師、看護師、薬剤師ら約30人で構成する。多様な職種のメンバーがいるため、希望により講師を柔軟に選べるのも特徴。管理栄養士が肝臓に優しい食事を紹介したり、歯科衛生士が肝臓病と口の健康の関係を説明したりもする。

 2013年に結成し、当初は院内で患者や家族向けに肝臓病教室を開いていた。検査をセットにした出張教室は15年から。仕事や育児、介護に追われ、時間にゆとりのない働き盛りの世代に、病院側から積極的にアプローチしようと乗り出した。

 背景にあったのは深刻な肝炎の実態だ。B型、C型の感染者は210万~280万人に上るにもかかわらず、厚生労働省の11年度調査では、肝炎ウイルス検査を受けたことがある人は26%にとどまっていた。

 治 療 相 談 も 対 応 

 出張教室は3月までに県内の保険会社や印刷会社などで35回開き、受講した1356人のうち、76%の1034人が検査を受けた。その中から15人の感染を早期に発見し、受診、治療につなげたという。チームの池田房雄医師は「講座を聞き、肝炎のリスクが頭に強く残っているうちに、その場で検査できるから受検率が高くなるのだろう」と効果を語る。

 検査で陽性と判定されれば、仕事との両立も含めた治療の相談に応じる。池田医師は「感染を早く知り、適切な治療を受ければ、肝硬変や肝がんへの進行を防げる。血液を介する肝炎は会話や握手など日常生活で感染することはほとんどない。検査の重要性とともに、周囲が感染者に偏見を持たないよう地道に呼び掛けていきたい」と言う。

 教室の申し込みはメールで岡山県肝炎相談センター(kanensoudan@okayama-u.ac.jp)。


 肝炎 肝炎になると肝臓の細胞が壊れて働きが悪くなるが、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、自覚症状が現れにくい。B型、C型肝炎ウイルスは主に血液を介して感染。他人の歯ブラシやカミソリを使わないといった基本的な注意事項を守っていれば、会話や握手、会食などの日常生活でうつることはほとんどない。この点が十分理解されておらず、差別や偏見の原因となってきた。
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