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憲法記念日 説得力足りぬ自民改憲案

 日本国憲法はきょう、施行から71年となった。自民党が2月、改憲条文案を参院の憲法審査会に示し、議論の加速を狙う中で迎えた憲法記念日である。相次ぐ不祥事で政権の求心力が低下し、安倍晋三首相の悲願である改憲に向けた勢いはそがれつつあるとはいえ、改憲の是非や内容について、近いうちに国民投票で選択を迫られるという局面は現実味を失ってはいない。

 首相が、新憲法を2020年に施行したい考えを突如表明したのは昨年の憲法記念日のことだ。その後、自民党は国民投票を経て20年の新憲法施行という筋書きを描き、1年かけて、首相の意向に沿った9条への自衛隊明記など4項目の改憲案をまとめた。年内の国会発議をなお視野に入れているようだ。

 改憲は極めて重大な政治テーマであり、手続きを進めるに当たっては野党も含めた国会と多数の国民の賛同を得ることが望まれる。国論を二分し、国民投票のぎりぎり過半数で改憲に至るような状況は決して好ましくない。

 だが、現状は程遠いと言わざるを得ない。野党ばかりか与党の公明党からも改憲への慎重論が出ている。加えて、自民党案が世論の理解を得ているとは言い難い。

 共同通信社が先週まとめた世論調査では、9条改正について「必要ない」46%、「必要」44%と拮抗(きっこう)した。災害など非常時に法律と同じ効力を持つ政令を内閣が制定できる緊急事態条項は、個人の権利を制限する条文に「反対」56%、「賛成」42%だった。

 無償化など教育充実のための改憲は「不要」が70%を占めた。参院選の合区解消は、8割が解消すべきと回答したものの、改憲という手法への賛成は33%にとどまる。

 改憲自体は「必要」「どちらかといえば必要」が計6割近くに上る。それがそのまま自民党案への評価に結びついていないことが見てとれる。

 緊急事態の対応は、既存の災害対策基本法などで対処できるとの指摘が多い。教育無償化も改憲に踏み込むまでもなく、法律で可能だろう。そうした点も含め、国民が自民党案に緊急性や必要性を感じにくいのではないか。

 自民党にとって“本丸”の9条改正案は、戦力不保持を定めた2項を維持した上で、世界有数の装備を持つ自衛隊を戦力とみなさずに明文化する点で分かりにくい。自衛隊は「必要な自衛の措置をとるための実力組織」とするが、必要な自衛の措置という曖昧な表現により、今は限定的行使にとどめている集団的自衛権の範囲が広がることを警戒する声も少なくない。

 何を変え、何を変えずにおくべきか。党内論議さえ不十分なまま事を急ぐべきではない。まして、期限ありきや改憲自体が目的化したかのような進め方に陥るなら、国民の広範な理解は到底得られまい。憲法改正と向き合う自民党の姿勢が問われている。

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