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シリア攻撃 混迷打開につながらない

 米国が英国、フランスとともに、シリアの化学兵器関連施設を攻撃した。トランプ米大統領はシリアのアサド政権に化学兵器の使用をやめさせるために必要な攻撃だったと正当性を主張している。

 アサド政権は今月、首都ダマスカス近郊で行った反体制派への攻撃で化学兵器を使った疑いが持たれている。非人道的兵器を使い、市民を殺傷したとすれば、決して許されない行為だ。

 米英仏は化学兵器禁止機関による調査結果を待たずに攻撃へ踏み切った。米国は猛毒サリンや塩素が使われた際にみられる症状が報告されたなどとしている。

 ところが、決定的な証拠を示したわけではなく、武力行使は性急と言わざるを得ない。ペンス米副大統領は状況次第でシリア再攻撃も辞さない構えを示したが、懲罰的な限定攻撃で市民の殺りくを止められる保証はない。

 アサド政権を支援するロシアは、ただちに国連安全保障理事会に攻撃を非難する決議案を提出した。米英仏などの反対で否決され、緊急会合は3カ国とロシアによる非難の応酬となった。

 米ロが重要な役割を担う国連主導の和平協議は、ますます実現が遠のいたと言える。こうした軍事力の行使がシリアの混迷打開につながらないことは明らかだ。

 トランプ政権によるシリア攻撃は昨年4月に続き2度目となる。化学兵器の使用報告はその後も絶えず、内戦による市民の犠牲は増えている。

 一方でトランプ氏は先月、米軍をシリアから早期に撤退させる意向を示すなど、対応は場当たり的だ。北朝鮮との首脳会談を控え、強い姿勢を示す狙いもあったとされる。だが、何より求められるのは、先の見えない内戦を終わらせる和平の道筋を国際社会とともに描くことであろう。

 ロシアは今回の攻撃に対して反発を強めている。しかし、アサド政権の後ろ盾となり、その増長を招いた大きな責任はロシアにあり、国際的な非難を招いている。強く自制が求められよう。

 内戦は反体制派と政権軍の戦闘という構図から、米ロ間の影響力争いというかつての冷戦を思わせる色彩が濃くなっている。イランもアサド政権を支援しており、さらに反体制派を支えてきたトルコは、敵視するシリア北部のクルド人勢力の抑止を狙ってロシア、イランに接近するなど、混迷を深めている。

 これ以上、力と力の対決がエスカレートし、市民の犠牲が増える事態は避けねばならない。和平に向けた国際社会の結束が問われる。

 安倍晋三首相はシリア攻撃について「化学兵器の拡散と使用を許さないとの米英仏の決意を支持する」と表明した。理解を示すばかりでなく、今週の日米首脳会談などを通して、トランプ氏にシリア和平に真摯(しんし)に取り組むよう促してもらいたい。

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