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「生涯現役」で生きがいや収入確保 岡山県内の高齢者就労支援

子供と手遊びを楽しむ団野さん

岡山市と岡山労働局の主催で初開催された「シニア世代対象就職応援フェア」=1月24日、市勤労者福祉センター

 「人生100年時代」を迎え、高齢者が定年後の生きがいや収入を確保するため、働く場づくりに向けた動きが活発化している。少子高齢化による慢性的な人手不足に悩む企業側も、働く意欲を持つ高齢者を積極的に活用したい意向だ。健康で勤労意欲が高い高齢者が増え、第一線を退いても「働きたい、社会貢献したい」と思っている人は多い。国や自治体が高齢者向け就労職相談窓口を設けるなど「生涯現役」を後押しする取り組みも広がってきた。岡山県内の状況を取材した。

 せっせっせーのよいよいよい…忍法使って空飛んで…♪ ちとせ保育園(岡山市東区益野町)に併設された学童保育「児童クラブ スマイル」の一室。共働きやひとり親家庭の小学生を放課後に預かっている。手遊び「お寺の和尚さん」の現代バージョンの歌詞と振りを小学生に教えてもらいながら、一緒に楽しんでいるのは、アルバイトの団野泰子さん(72)=同市中区=だ。昨年7月から週4日、1日3時間働いている。

 関東圏から2年前、息子の転勤で岡山市に引っ越してきた。地域とつながる手段として仕事をと、就労を希望する高齢者と企業の橋渡しをしている市生涯現役応援センター(同市北区大供)へ相談したのが、“再就職”のきっかけだ。療育や保育をテーマにした映像教材製作に携わった経験から、子供にかかわる仕事を希望。「未知の世界だったが、おばあちゃん先生としてやりがいを感じている」と団野さん。月約4万円の収入は、昔の知人に会うための上京費などに充てることができ、充実の毎日という。

 体力づくりのため、片道25分を自転車で通っており、同園の樺山貴美江園長は「外遊びが難しいかもと思っていたが、とても元気。面接の時より若返っている印象です」。同園では団野さん含め3人のシニアが活躍、職員が手薄な時間帯をフォローしている。

■高い就業意欲

 国の高齢社会白書(2017年版)によると、労働力人口総数に占める65歳以上の割合は11.8%(16年)。年々上昇傾向にあり、この四半世紀で2倍になった。高齢者の就業状況をみると、65~69歳で男性の53%、女性は33.3%と、65歳を過ぎても多くの人が働いている。ある意識調査では、仕事をしている高齢者の約4割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答。高齢期にも高い意欲を持っていることがうかがえる。

 仕事をすることで健康を維持し、地域や企業で活躍してもらおうと、岡山市は2015年、概ね60歳以上を対象にした「生涯現役応援センター」を立ち上げた。登録者は1月末、17年度の目標としていた300人を達成。「高齢者といっても若々しく、誰かの役に立ちたいと思っている人が多い」と同センター。最近はボランティアより、就労の相談が増えてきており、「年金が目減りする中、生活費の足しにしたいという背景もあるようだ」と分析する。

 就労意欲がある高齢者と売り手市場で人材確保に悩む企業を引き合わせれば、人手不足の解消につながる。65歳以上の就職に力点を置いた「生涯現役支援窓口」を17年度に設けたハローワーク岡山(同野田)は、職員3人が対応。1月には同市内で初めて市と共催で「シニア世代対象就職応援フェア」を開いた。見込みの50人を上回る約90人が参加。スーパーや福祉施設など22社が集まった会場は、順番待ちができるブースもあった。谷本勉就職相談部長は「企業などで勤め上げた実績を持ち、忍耐強いのがシニアの利点。両者をマッチングする場になれば」と話す。

 県も2月定例県議会で、県、県内経済、労働団体などによる「県生涯現役促進協議会」を新設し、高齢者の就業機会の拡大に乗り出す方針を示している。

■ミスマッチ課題

 課題もある。「腰が痛いので棚卸しはできない」「通院しているので、週3日の短時間勤務希望」…。ハローワーク岡山などを訪れる求職者の多くは、加齢による体力の低下や健康上の不安から、柔軟なシフトや短時間勤務を希望する人が少なくない。一方、受け入れ側は安定した労働力を求めているうえ、業種も敬遠されがちな福祉や流通業界と限られる。谷本部長は「その人が培ってきた専門性や経験を生かせないケースが多く、条件がかみ合わない」と打ち明ける。月平均12、3人の相談者のうち、実際に就労につながるのは約4割。「窓口開設のPR不足もあるが、厳しい状況」(谷本部長)というのが実情だ。

 就職支援窓口の運営や企業説明会、各種セミナーなど地域一丸となって取り組む総社市も、同じ悩みを抱える。市、商工、福祉など10団体で構成する市生涯現役促進協議会を16年に設立し、国の採択を受け事業を推進。登録者数は2月末で237件、就労者数は89人。同協議会の久保豪事業推進員は「フルタイムで働いてほしい企業と健康づくり程度で気軽に働きたいシニアとの意識のずれを感じる」と話す。

 今後も、企業側には自由な働き方を求めるとともに、需要と供給のミスマッチ解消へ多彩な業種の開拓に取り組む。高齢者向けには働くことへの意欲づけを図るセミナーや起業家セミナー、就職説明会などを展開する予定だ。

■満足度120%

 「頑固といわれる側面もあるが、自分にできることは協力や労力を惜しまない」。高齢者を積極的に採用している会社インディケイツ(岡山市北区日吉町)の末永祐子代表取締役はシルバー世代をこう表現する。同社は外国人技能実習生を受け入れ、日本の企業で働く前の約1カ月間、日常生活のルールや社会人としてのマナーを教えている。同社のスタッフ12人のうち、11人が65歳以上だ。「シニアには先生として民間企業で働いてきた知識を還元してもらっている。実習生の受け入れがない時もあり、柔軟な勤務に対応してもらえるのもメリット」(末永さん)という。

 経験を生かす仕事に出合える人ばかりではない。50年以上経営していた呉服店をたたんだ男性(73)=岡山市中区=は、庭木のせん定や外国人技能実習生の生活指導員として活躍している。「これまで好きなことをして自分は完全燃焼していたと思っていた」としたうえで、「今やっていることは自分がやるとは夢にも思っていなかったことばかり。最初はできるだろうかと不安だったが、いざ挑戦してみるとすごく楽しい。満足度でいうと120%。何事もやってみないと分からない」。
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