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自民党の改憲案 丁寧さを欠いた党内議論

 自民党の憲法改正推進本部が、憲法9条を含む4項目の改憲案を集約した。安倍晋三首相の悲願である改憲へ向けた国会での発議を目指して、自民党は早期に他党との協議に入りたい考えだ。

 ただ、学校法人「森友学園」を巡る文書改ざん問題で、首相の求心力は低下している。公明党のほか、改憲に前向きな希望の党や日本維新の会にも慎重論が目立つなど風向きは変わりつつあり、先行きは見通しにくい。

 条文を集約したのは、9条への自衛隊明記、緊急事態条項、参院選の合区解消、教育充実の4項目である。

 このうち、自民党が“本丸”に位置付けるのが9条だ。「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と定めた2項を維持した上で、必要な自衛の措置をとるための実力組織として自衛隊を保持する、という内容を加える。

 自衛隊は「戦力」に当たらず、必要最小限度の実力組織だとする政府解釈に沿う内容である。だが、世界有数の装備を備えた自衛隊を戦力とみなさないという根本的な矛盾がこれで解消できるだろうか。複雑な解釈が残るようでは、首相が改憲の目的に掲げる「自衛隊の違憲論争に終止符を打つ」ことになるかどうかも見通せまい。

 条文案にある「必要な自衛の措置」に関しては曖昧さが残り、自衛権の範囲を巡って議論を呼ぶ可能性がある。

 集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法は2015年に成立、翌年施行されている。現行法では限定的な行使容認にとどめているが、今後、関連法の改正などを伴った上で、自衛隊の活動範囲がさらに広がることも否定できない。野党には、集団的自衛権の行使に際限がなくなるとの警戒感が広がっている。

 集約に当たっては党所属国会議員から100以上の案が寄せられたという。9条2項を残すか削るかを中心に意見は割れ、最後は異論を振り切る形で細田博之・憲法改正推進本部長に一任された。25日に行われた党大会までに集約したい思惑があったようだが、大会では具体的な条文案は提示しなかった。

 熟議を棚上げして事を急いだ印象は否めない。目指す年内の改憲発議や、首相の任期中の改憲実現といった日程ありきの姿勢が先に立ってはいないか。自己都合が透けて見えるようでは、最終的に投票を委ねる国民の幅広い支持を得ることは難しくなろう。

 大地震などの災害で国会が十分機能しない場合に、法律と同じ効力を持つ政令を内閣が制定できるよう憲法に定める「緊急事態条項」の新設についても、災害対策基本法など既存の法律で対処は可能だという指摘もある。

 いま、改憲に踏み出す緊急性を要する項目が本当にあるのか。あるとすれば何を、どう変えるべきか。しっかりと時間をかけて党内議論を積み上げることが必要だ。

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