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〈心のなかでよっちゃんは「海の…

 〈心のなかでよっちゃんは「海のバカヤロー」となんかいもなんかいもさけびました〉。田畑ヨシさんは1933年の昭和三陸津波で母を失った。その体験を自ら描いた紙芝居からは、8歳の心に感じたやるせなさが伝わってくる▼岩手県宮古市田老地区で生まれ育ち、明治三陸津波(1896年)に遭った祖父から「命てんでんこ」をすり込まれた。津波は必ずまた来る。家族にもかまわず自分の命は自分で守れと。その教えを子どもたちに伝えるために紙芝居を作り、読み聞かせてきた▼7年前のきょう、東日本大震災で田畑さんは2度目の津波に襲われた。家を流され、青森の長男宅に身を寄せた。だが、紙芝居の要請があればできる限り応え続けた▼昭和三陸津波の後、田老地区では高さ10メートルもの防潮堤が築かれ、防災教育に努めていたが、約180人が犠牲になった。過信はなかったか。津波の恐ろしさが薄れてはいなかったか。教訓を伝える使命感が田畑さんの背中を押していたのだろう▼先月末、田畑さんは93歳で亡くなった。また一人、貴重な語り部がいなくなった。本当に怖いのは津波を忘れること―。その戒めを私たちは引き継がなければならない▼歳月は流れ去っても、心に記憶を刻むことはできる。あらためて被災地を思い、身の回りの防災を見直すきょうの日にしたい。

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