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豊島のソーラー建設に島民強行阻止 住民運動大きな広がりに

ソーラー建設予定地の進入路で見張りをする島民たち=2月8日、豊島唐櫃地区

民間業者によるソーラー施設の建設が予定されている場所。産廃撤去のため産廃撤去作業が進められている

ソーラー施設建設反対を訴える看板=豊島唐櫃地区

豊島のソーラー建設予定地

 国立公園に指定されている瀬戸内海の豊島(香川県小豆郡土庄町)で建設が計画されている民間業者(広島市中区)による太陽光発電(ソーラー)施設が、大多数の島民の強硬な反対にあい、計画が大幅に遅れている。住民は島の海辺や陸上部などで終日、交代で見張り番に立ち業者の建設資材の搬入を阻止しているためだ。同島にソーラー計画が浮上し、すでに2年余りが経過したが、景観保護を求める住民側と業者の対立が深刻化。建設阻止を目指す住民運動は、国を巻き込んで大きな広がりを見せている。全国各地でソーラー建設を巡る住民と業者のトラブルが多発するなか、同島の住民運動は今後のソーラー建設のあり方に一石を投じることになり、今後の動向が注目されている。

 ソーラー施設の建設が予定されている地域は、同島東海岸付近の唐櫃(からと)地区の高台に位置し、小豆島など瀬戸内の多島美が一望できる景勝地。昨年9月に事業者が開いた住民説明会によると、5千〜6千平方メートルの敷地を賃貸し、ソーラーパネル約3600枚を設置。発電出力7500キロワットの設備を今年2月に建設する予定だった。同ソーラー計画が表面化したのは、2015年末から翌年初めにかけ、唐櫃地区栄山(えやま)で約1.2ヘクタールの造成工事が行われたことが端緒。これを受け豊島自治連合会は島の定住成人人口の95%にあたる738人の反対署名を集め、昨年5月に県、土庄町、中国電力(広島市)に建設中止を陳情、環境省と経済産業省にも陳情団を送った。しかし、同年11月には予定地の産業廃棄物の撤去作業が始まった。

 島民の反対を受け、香川県、土庄町は昨年9月、経済産業省を訪れ同省が定めた太陽光発電に関する事業計画策定ガイドラインに基づき、業者に対し適正な実施を行うよう十分な指導を行うとともに、地域との関係構築に配慮するよう陳情。また、これまでソーラー建設の事実上の規制がなかった土庄町は、急きょ今年1月10日に景観計画と景観条例の一部変更・改正を行い、新たに太陽光発電設備の設置を行う場合、「太陽電池モジュール(パネル)の合計面積が千平方メートルを超えるもの」については、景観形成基準を確認のうえ、景観への配慮と建設の届け出を義務化、さらに景観保護のため「太陽光パネルの色彩は黒色、もしくは濃紺色など目立たないもの」「設備の高さは低層に抑え、周囲の景観から突出しない」「陵線を乱す設置は避ける」など事細かな規制を加えた。町は条例施行から30日間の経過措置をとり、2月8日までに着工したものは対象外とし、同9日以降に着工したものを規制対象とした。

 町の景観条例の一部改正を受け、業者は1月28日に開催した2回目の住民説明会で予定地の産業廃棄物の撤去が終わらない内は工事に着工しないと約束したが、同31日には撤去作業のめどが付いたとして、建設資材などを積んだトラックが予定地に入ろうとしたため住民側と対立。住民らが県道から建設予定地に入る進入路をふさぎ、資材の搬入を阻止した。当日は住民約30人が阻止行動に加わり、業者とのトラブルを回避するため警察官9人が動員されるなど、ものものしい雰囲気だったという。

 同島自治連合会の三宅忠治会長(70)は、強硬な阻止活動に踏み切った理由として「住民はソーラー建設を認めていない。産廃は完全に撤去されていない状況で工事に入るのは約束違反」としたうえで、「土庄町の条例は2月9日以降のソーラー建設に適用されるため、業者はそれ以前に着工して既成事実をつくりたかったのではないか。島民が寝ずの番でピケを張らないと島の景観は守りきれない」と厳しい表情だ。住民たちは以後、建設予定地への進入路と付近の海岸に見張り番を張り付け、厳重な監視体制を継続している。付近の海岸には業者が船で資材を運び込めないように、島の漁師が総出で浮き(ブイ)を100メートル近く設置した。

 三宅会長は「島の住民が総出で見張りに立っている。1日の動員は20~30人になり、改正景観条例は施行される今月8日までに、延べ200人以上が朝7時半から夜7時過ぎまで見張った」という。9日以降の着工は景観条例の対象になるため、住民たちはこれまでの厳戒態勢はひとまず解いているが、少人数での見張りや警戒は怠らないという。

 町の改正景観条例などの施行で、今月9日以降の着工は、同条例の適用を受けることになるが、業者側はこれまでの住民説明会で「施設は周囲を木々などに囲まれているので住宅からは見えない」と主張しており、届け出の窓口となる同町建設課は「景観保護などに配慮した内容であれば受理せざるを得ない」としている。

 同島はかつて1975年から民間業者が産業廃棄物を不法投棄した問題で、住民側が産廃撤去運動を展開、裁判に勝訴して産廃を撤去させた経緯がある。この時、島民のリーダーの一人として反対運動に25年間関わってきた石井亨さん(58)=同島甲生=は、「景観に配慮したソーラーだと業者が主張し、それが容認されれば、町のほうで建設を中止させる理由がなく、結果的に建設は認められることになる。どう考えてもソーラーが国立公園になじむはずがない。営利目的の産廃やソーラーは絶対に島に持ち込ませたくない。経済原理だけを通すのは間違っている」と話している。

 強制力ない景観条例 ―取材を終えて

 豊島は玉野市・宇野港から旅客船で約25分。周囲が19・8キロ、面積が14・4平方キロの小さな島だが、瀬戸内の素朴な風景と生活が今に伝えられている。最近は瀬戸内国際芸術祭の舞台として、美術家・横尾忠則氏の作品を集めた美術館などが常設され、国内外にその存在が知られるようになった。

 この静かな島でソーラー騒動が起きたのは今から2年前のことだ。豊島の住民たちによる反対運動は、美作市作東地区のケースとともに、昨年10月、本コーナー「おかやまインサイド」に記事を掲載した。それから4カ月が経過し再び取材のため豊島を訪れた。今回の取材を通じて感じたのは、以前にまして「島を守る」という住民たちの強い執念だった。建設予定地への進入路に毎日見張り番を立て、海上は船の出入りを防ぐための「浮き」まで設置し、完全な防御体制を敷いている。船が島に入れそうな場所を常時監視、フェリーが島に着くたびに島民が業者関係者の出入りをチェックしている。

 全国ではソーラー建設をめぐり、いたるところで景観破壊や安全性の問題で住民と業者との間でトラブルが起きているが、豊島ほど徹底した反対運動を展開している地域は珍しい。その背景には同島がかつて産業廃棄物の不法投棄問題で、長い闘争を強いられた苦い経験があるからだろう。

 それにしても住民の大多数が反対するソーラーがなぜ建設されようとしているのか、素朴な疑問を感じざるをえない。土庄町は直近になってやっと景観条例を一部改正し、ソーラーによる景観破壊に歯止めをかけようと動き出した。しかし、これさえソーラー建設の阻止にはほとんど役立たない。観光資源の蒜山の景観を守るため、真庭市のように地域を指定しソーラー建設を〝厳禁〟しているケースもある。景観を守るという県や町の強い意志があれば、もっと早い段階で建設を阻止することができたはずだ。

 業者は電話もメールも公開していないため連絡がとれないなか、住民たちのいらだちは募るばかりだ。島民たちは町への建設届け出が認められれば、最後の手段として建設差し止め訴訟を起こすことも考えているが、「景観問題だけで実質的な経済被害が発生しないため、裁判を起こす当事者適格が認められるかどうか。国が再生可能エネルギーを率先して推進しているなか、提訴できても勝訴できるかどうか、見通しはまったくつかない」(石井さん)と島民サイドは厳しい表情だ。今回の住民の反対運動は単に豊島だけに限らず、全国で起きている運動の今後の試金石となる。
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