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女からの暴力に悩む男たち

警察官を講師に開いたDV講義で、パートナーからの暴力に備えて護身術を学ぶ学生たち=昨年12月、徳島文理大

 十数年前から夫婦や恋人の中で起きる暴力、いわゆるドメスティックバイオレンス(DV)に関わる相談と研究をしています。最近こんな相談が増えてきているのです。

 ある男性(50代)からの相談です。妻から(50代)から殴る蹴るの暴力を受けて行き場がなくなったので逃げる場所を教えてほしい、というのです。事情を聴くと、交際中は優しく、いい人だったのに、いつの間にか家に入りこみ、結婚を迫り、もしできないならば慰謝料を要求すると脅されました。基本的には優しい人だと思っていたので婚姻関係を結ぶと、突然態度が変わり、妻は自分の行動を管理して「帰ってくるのが遅い」「稼ぎが悪い」などと文句を言い、次第に暴力も振るうように。さらに、貯金を勝手に使って服や鞄(かばん)を次々に買っていたことが発覚したので、離婚しようと伝えたところ、妻から「この家は私のものだから、あなたのほうが出ていくのよ」と言われてしまった。どうしたらいいのでしょうか。

 にわかに信じがたいかもしれません。しかし警察庁によれば、DVの男性被害件数は2012(平成24)年の2300件から、16(平成28)年は1万件と約5倍増となっています(ちなみに、女性は4万件から6万件へ推移)。昨年12月に、警察官の方によるDV講義を行ったときにも同様のお話があり、もう男性から女性だけの暴力とは限らない時代になってきたようです。

 実際、その講義を受けた学生たちからは「女子が男子にDVをする話は珍しくない」「前カノから『生理中だからイラついて』という理由で、叩かれていた…」という感想も寄せられました。

 どうして女性が暴力を振るうのでしょうか。そもそも男性と女性、どちらの攻撃性が高いのでしょう。半世紀前から多くの研究者が繰り返し暴力や攻撃性に関する調査を行っていますが、StrausとGellというアメリカの研究者が行った調査(1989、90年)でも、男女の攻撃性は同程度ということが明らかになっています。

 こうした現状を踏まえて、いち早くアメリカでは2000年初めに、DVという用語ではなく、親密関係における暴力を指す「Intimate partner violence:IPV」に統一しています。それまでは、男性から女性への暴力だけを想定していましたが、反対もあること、また同性同士のカップルにも起こっていることを考慮したからです。

 とはいっても、もちろん女性に対する暴力が多いのは間違いありません。女性をメインとしたDV対策は継続しながらも、男性や同性同士のカップルの間でおきる暴力への対応を広げていくことが求められます。

 年末に行ったDV講義の後半には、男女問わず暴力を振るわれる可能性があることを踏まえて、警察官の方から護身術も教えていただきました。男女ともに、パートナーからの暴力に身を守る備えをする。この授業を企画しながら、複雑な思いとなりました。

 ◇

 小畑千晴(おばた・ちはる)徳島文理大学心理学科准教授。臨床心理士。武庫川女子大学大学院修了後、岡山大学男女共同参画室助教。ドメスティックバイオレンス、摂食障害、女性の両立問題などをテーマに研究を行う。勤務先が徳島のため、岡山市在住の家族とは週末生活を送る。1973年岐阜県生まれ。

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